ナツミ

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミーのナツミのレビュー・感想・評価

3.2
filmarksオンライン試写で鑑賞!ありがとうございます。

正直、今作に新しさは感じなかった。
だけど社会にうっすら広がっている...なんというか、埋められない本質的な孤独、みたいなものが描かれていたように思う。
それが観念的ではなくリアルで、そこが一番怖い。

キャッチコピーにもなっている「90秒憑依チャレンジ」は、降霊会から厳粛さを取っ払い、全てを簡易化し楽しさだけを抽出した遊び。
グロテスクな霊を強制的に憑依させて、本人も楽しい、周りも動画に残したり囃し立てたりと、パーティーゲームのような扱い。
90秒を超えるとヤバいらしいのだが、そのリスクさえ娯楽として消費している。

昨今、曲はイントロを短くしないと飛ばされるだとか、映画を倍速で観るだとか、お手軽なもの、時間をかけずにパッと楽しめるものを楽しい部分だけつまみ食いするようなスタイルが流行っているらしい。
映画を倍速なんて、作品を侮辱してるようなものじゃないかと恐ろしいんですが...。磨き上げられた俳優の演技や映像美、轟く音響など大切なものは無視され潰されてしまう。
このゲームも同様、単にスリルや非日常を楽しむのみに終始し、畏れや敬意が全く消え失せている。
理由もなくランダムに霊を呼び出し憑依させて楽しみ、90秒で引き剥がす。なぜそんな身勝手なことを楽しめるのだろう?

主人公ミアは寂しがり屋ですぐ他人にベタベタするような性格。
彼女は手軽に寂しさを埋めようと、この憑依ゲームにハマっていくが...。
心の隙間に悪いものが入っていく展開はホラーの定番だけど、今回の主人公は楽な方へ流され、本質的なものから目を逸らし、立ち向かうことをしない。
周りに差し伸べられた手を取らず、目の前に置かれた訳のわからない手を取ってしまった。それが彼女の弱さだ。因果応報だ。
だけど、いつ自分がそうなってもおかしくない。考え無しの人間は自覚がなんて持てないんだから。それが、本当に怖い。
ナツミ

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