ナツミ

ナポレオンのナツミのネタバレレビュー・内容・結末

ナポレオン(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

フランス...陸軍...ジョゼフィーヌ...

ホアキン・フェニックスの顔の大写しを観るだけで2000円(値上がりつらい)は回収できるのだけど、期待以上に好きな作品だった。
壮大な戦いのシーンはスクリーン前方から観て没入感がすごかったし、節目節目の絵画的な美しさにしびれた。

ナポレオンを英雄としてではなくひとりの人間として描いているところがすごくよかった。
最初も最後も全然上手く戦えていない様を滑稽に描き、ジョゼフィーヌに子供のように甘えたり、弟の作戦で喉元にサーベルを当てられたらガチでビビってたり。
「ただの男」の一面をきちんと描くから、作戦が功を奏し生き残り続けたがために、どんどん地位が上がる彼の一生...後世になっても語られ、英雄、あるいは悪魔と呼ばれる人生って、一体なんなんだろうか?と考えさせられる。

彼はジョゼフィーヌと口論になった夕食の席で「運命が私をここへ連れてきた」と言った。
まさに運命に従い、時の要請に応えるように、戦い地位を得てきたナポレオン。だが勝利に固執した途端に転落していく。ワインの中の蝿が象徴的だった。

流刑先の少女たちに自分の功績を自慢するナポレオン。しかし「モスクワを焼き払った人?知らない」「ロシア人がフランス軍を追い払うために焼いたの。常識よ」とつめたく言われてしまう。
最後、スクリーンには彼が率いた戦争の死者数が映しだされる。
いくら個人的なドラマがあったとしても、結果残るのは無関心な数字だけだよ...。
そんな、監督の冷静なナレーションが聞こえてきそうなラストだった。

印象的だったのが、エジプトでミイラの囁きを聴き、手を伸ばすナポレオンのシーン。彼は彼自身が死んで時間がたったときも、そんな風に彼自身の物語を聞いてほしいと思ったのかな。そう信じて人生を送ったのかもしれないな、と思った。
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