ナツミ

オオカミの家のナツミのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.3
な、な、なんじゃこりゃ〜!まだあまり整理できてませんが書いておこう

まず映像が異様で、カサカサカサ...ヒソヒソヒソ...という気配と共に幾度も修正されながら平面が流れ立体が組み立てられたと思えば崩壊し、黒く塗り潰される。高熱に魘されている時のような精神のざわめきを感じて動悸がしたよ。こんなの観たことない!製作どれだけの時間かかったんだ...と宇宙猫の顔になる。

主人公マリアが「命令ばっかりで嫌になる!」とコロニーを飛び出すところから話は始まるんだけど、子豚2匹を人間の子供に変え、ふか〜い尊厳を...与える......というところからもう全然着いていけなくて猛烈に怖い。何の話?
動物をたくさん連れてきたお礼にと木から林檎をもらう→食べたら色々創る能力が宿った、というのもわからなかったけど、オオカミが写真でしか出てこず、最終的に子らを食べるのが木であるということから、これはコロニーの価値観に従った結果取り込んでしまった思想のことなのかな、とか考えた。

「もうお仕置きはいや」「白い肌の子しか蜜が貰えない」「金髪碧眼になる=良い決断をした」このあたりから選民思想や虐待を感じたけどこれ実際のカルト団体の話を元に作られてるんですね...。暗澹とした気持ちになった。
自分の家を得て幸せそうなマリアに「私を感じるか?」「お前の中にずっと居たぞ」と語りかけてくるオオカミ。それは壮絶な環境の中でマリアに植え付けられた呪いなんだろう...「オオカミの家」というタイトルが怖くなってくる。

これってコロニーの外でいくら安全で幸福な生活を手に入れたとしても、不意に災難が襲ってきたり自分のやり方が受け入れられなかったり(コロニーの教えを実践した結果なのだが)するから、結局はコロニーで暮らすのが一番幸福だよ、何も考えずに従え(それともお前は豚か?食ってやろうか?)ってことなのかしら。
プロパガンダだよ♪という設定や実在した地域を元にしているということも含め、後味の悪いイヤ〜...な怖さがジワジワと迫ってくる作品でした。

個人的には、ペドロとアナの機嫌を損ねたくなくて強く言えず食べられそうになりながらオオカミに祈りをささげるマリア、という流れに物凄い闇を感じた。
結局一度こういう場所で過ごしてしまうとそう簡単にオオカミからは逃れることができない。どこへ逃げたって自分の中に既にオオカミは潜んでいる...そこが一番恐ろしいかもしれない。
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