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窓ぎわのトットちゃんのテレザのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
3.9
素晴らしかった。
冒頭から15分ほどは、トットちゃんのお転婆っぷりを子供にありがちな微笑ましい様子とする理想的な世界観に半ば退屈、ともすれば苛立ちながら(私はアニメ作品特有の女児のこれ見よがしな高い声がちょっとニガテだ)観ていたのだが、段々と着実に、彼女の「ひとの気持ちが分かる」天真爛漫に魅せられていった。

シナリオ的には激しい起承転結があるわけではなく、主にトットちゃんとクラスメイトの「やすあきちゃん」との交流が丁寧に描かれていて、それが良かった。後から考えればそれらは後半に待ち受けている運命への「泣き」のための伏線演出と言ってもよいのだが、観ている最中はそんな穿った見方はできないくらい、目の前で繰り広げられる人間愛溢れる物語にフツーに感動してしまった。(なんか疲れてて、素朴な愛に飢えていたのかもしれない。私は客がほとんどいない正月の劇場で自由自在に泣いた。)
なにせ「いい子」なのだ、トットちゃんは。そして彼女が「いい子」であることを、上から目線で説教臭い感じで伝えるのではなく、凄く自然な感じで演出されていることも良かった。子供の無邪気さ、その魅力が最小の理屈で最大限に描かれていた。

※ちょっと褒めすぎかもしれないのは、私が"ももクロの赤"に感情的に入れ込んだように天真爛漫ヒロインに弱いからでしょう※

時折挟まる、そのシーンだけ別のスタジオで作られたような特徴的なアニメーションシーンも良かった。ちょっとした短編作品のようなそれらアニメーションは、個々のシーンで作家性が違う感じがあって、色んな趣向を観ることができて贅沢だった。

尋常じゃなく個性派だったトットちゃんは尋常小学校を退学させられ、トモエ学園というリベラル小学校に来たわけだけど。演出やシナリオとは関係なくおそらく事実として、あの時代にあんなに自由な校風の学校があったことが驚きでもあった。(国からの命令で全ての学校で当然のように教育勅語を読まされ軍隊のような生活をしているもんだと…。)それもひとえに、小林宗作先生という素晴らしい教育者がいたからであり、この映画を通して多くの教育関係者に彼のスタンスを見てほしい。
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