テレザ

オッペンハイマーのテレザのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
たしかに登場人物は多いし名前も似通っているし呼び名も人によって変わるし、一人ひとりが異なる思惑を持っているが巧妙にそれが隠されている、みたいな、ドストエフスキーの小説(特に『悪霊』)を彷彿とさせるような複雑でポリフォニックな群像劇ではあるのだが、だからこそ「この物語の化学式を全て理解したい」と探求心に火を付けられるような作品になっている。

それぞれに章の名前が付けられたモノクロパート(「核融合」)とカラーパート(「核分裂」)が交互に差し込まれる演出が乙で(ミゲル・ゴメス『熱波』を思い出した。交互じゃないけど)、しかもモノクロの方が時間軸的には未来なのが尚乙。しかしおそらくそれは、原子爆弾の使用が「成功」した後の、途方もない暴力の可能性が開かれた世界の「灰塵」を象徴する意図もあるに違いない。

それにしてもロバート・ダウニー・Jr(っつーの?)の洗練された悪党おやじ的色気、すごくないですか?なぜか知らんがスーツの下のムチムチした胸筋が透けて見える…その幻視を再度確かめたい、あとエミリー・ブラントのナンチャッテ裁判でのインテリ早口陳述をもう一度聞きたいし、フローレンス・ピューの…、あと脳内人物相関図を完成させたい…そんなこんなで二回目も観たい。
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