テレザ

ラーゲリより愛を込めてのテレザのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
2.3
映画としては0点だがテレビドラマとして見れば良作なのでは。
俳優の演技自体は悪くないし、ストーリーも死ぬほど分かりやすい。しかもジャニーズの二名含め世間に広く知れ渡った顔ぶれの豪華キャストなので、夥しい数のレビューから分かるように「ソ連による日本兵のシベリア抑留」の史実があったことを多くの若年層に知ってもらうことには成功した作品と言える。

ただ映画としては(野暮は承知で)唾棄すべき点が多い。
まず美術、衣装、ヘアメイクの浅はかさ。全体的に小綺麗すぎて、誰がこれを見て「極寒の地での強制労働、辛そうだなぁ、ひどいなぁ」と感じるのか。説得力がゼロである。豪華キャストに支払うギャラで予算が尽きていたとしても、もっと工夫できただろう。
・序盤のハルビンの街のセットがかなり安っぽい。空襲シーンでの、取ってつけたようなガレキの山のハリボテ感よ。
・軍服が無限に新品すぎる。近くに無印良品でもあったのか?完全に丁寧に暮らせている。
・全ての抑留兵の肌艶が良すぎるし髪や髭がクソ綺麗に整えられている。
そして酷いのが台詞や演出のあまりのステレオタイプっぷり。中身の演技は良いのに、ガワの演出が幼稚すぎて全てが滑稽な良くできたお遊戯会に見え、全俳優に同情した。(客層が若いジャニオタであることを見据えて「こんぐらい分かりやすくしないとお客さん理解できないよネー」とプロデュースされたのだろうことがヒシヒシと伝わってきて、厳しいものがあった。)
極めつけは、なんか知らんがいつの間にか主人公に懐いている、イヌ。そしてそれを使って最大の感動ポイントを作為する、馬鹿さ加減。あそこは笑いました。お涙頂戴が乞食レベル。

主人公となった山本幡男は優秀な文人でもあったというから、生きていたらドストエフスキーの『死の家の記録』やソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』にも劣らない、収容所での暮らしを文才豊かに描いていたかもしれない。
この映画をきっかけにこの人物のことを知れたのは良かった。映画としては0点だけど。
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