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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)のテレザのレビュー・感想・評価

3.7
この映画は大学生の頃に一度劇場で観たことがあったが記憶は薄れていたし、最近になって山本直樹の長編漫画『レッド』全13巻を読了したことでちょっとした事情通になったような感慨があり映像でも見たくなったので再度鑑賞、アマプラで。

若松監督が自宅を抵当に入れたり、自前の別荘をロケセットとして使うほど費用的に苦しくてもこれを撮る必要があったのは、『突入せよ!「あさま山荘」事件』に憤慨したからなんだとか。なるほど『突入せよ!~』は予告を見た限り、警察のヒロイズムたっぷりな、いかにも典型的で野暮ったい感じがあったので私も最初から観るつもりはなかった(役所広司好きなのに)。被害者側の感傷に浸かる作品ばかりであってはならず、加害者側の実際にも焦点を当てるべき…という姿勢から生まれた今作は、オウム真理教の幹部らを追った森達也の『A』にも通ずるものがあり、ほぼドキュメンタリーであった。(ラストの意図的な「創作」までは。)

彼ら連合赤軍の最大の過ちと言える、総括に次ぐ総括のシークエンスは執拗に長すぎて寝落ち必至(『レッド』で私も粛清に慣れてしまったのかもしれない)だったが、加速していくリンチインフレ的な状況で命の価値がどんどん下がっていくように思えてしまうあの異常心理状態と、組織内で一度醸成された空気を打破することがかくも困難であることは誰にでも日常的に起こり得る直視すべき、普遍的な人間の欠陥であり、最も比重を置いて描かれるべきものであったことは間違いない。

ラストの「創作シーン」で涙ながらに「打破する唯一の素朴な方法」が、あるメンバーの声を借りて叫ばれたが、その素朴な振る舞いをどうしていまでも私たちは集団の中にいると発揮できないのだろうかと、ある程度の自戒を込めつつ、コロナ自粛祭り+マスク半強制ムーブを世界でいちばん最後になるまで終わらせられなかった日本社会に半永久的に問うていきたい。
まずお上の命令があり、下々は下々同士でお互いの顔色を伺い忖度し合う。山岳ベース事件はこの社会の縮図なのですよ。(最後、無理矢理だな)
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