Ayu

窓ぎわのトットちゃんのAyuのレビュー・感想・評価

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)
4.0
原作はたぶん幼少期に読んで記憶にない(が、黒柳徹子さんがお嬢様だったと言う逸話はちゃんと覚えていた)評判良いから観なきゃなと思っていたけど朝イチの回に起きられる気がせず、昼の時間を見つけて満員売り切れの劇場で鑑賞。学校で勧められたりしたのか親子連れが観客の1/3を占めており、珍しい体験だったなと(レイトショーで観ることが多いので)

子ども向けのほっこりアニメーション映画なのかなあ、とのほほんと構えていたら大人で時代背景がわかっていればいるほど胸をグサグサと刺してくるすごい作品だった。大人の観客である私たちはトモエ学園に居る子どもたちが現代社会に当てはめたときにどう言った風に形容詞され、扱われる子どもたちなのかがわかってしまう。理想論かもしれないけど、それでも全ての子どもたちは個性を、人権を尊重されながらそれぞれに合った教育を受けるべきだなとすごく感じた。教育って難しいなとしみじみと思う。

どんどん不穏な空気が漂って爆発する怒涛の終盤の展開、中盤から隣の見知らぬおばさまと2人でしくしくとタオルハンカチで涙を拭い、鼻をすすった。主人公のトットちゃんが街を走るシーン(台詞なし劇伴のみ)で詰め込まれた情報量が語る悲しさや虚しさにびっくりするくらい涙が出た。多種多様な価値観を包み込むおおらかさを次第に飲み込んでいく戦争や、全体主義の恐怖を子ども目線で描いた傑作。時々差し込まれるテイストが変わるアニメーションがとても良いアクセント、私は雨の夜のが好きです。
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