Ayu

哀れなるものたちのAyuのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭の争奪戦に完敗したので大人しく劇場にて鑑賞。この劇場のこのスクリーンはサイズが大きい割には座席とスクリーンが近くて傾斜が高く、一番後ろの席(定位置)でもいい意味で圧迫感があるので、本作の持つ物語の力強さと合っていたように思う。

読ませるつもりがさらさらないエンドロールの素敵なフォントやカットを眺めながら、美術館で観たベラスケスやレンブラントの絵画を思い出した。光と闇の、モノクロとカラーのコントラストのメリハリがとても効いていて、どこかバロック絵画や宗教画を連想させるこの作品は、不思議な魅力の詰まった、愛すべき変な映画だなと思う。

141分かけて描かれるベラを演じたエマ・ストーンの圧倒される演技を超えつつある現象みたいなものを劇場公開時にリアルタイムで眺める楽しみたるや。御伽話でもあり寓話でもある世界観の中に潜み、現代を生きる観客の私たちを鋭く刺してくる哲学や風刺の塩梅が見事に知的好奇心を刺激する。メソメソしちゃうマーク・ラファロ(あんな情けなく泣き喚く男の人、久しぶりにスクリーンで観たよ)と控えめな笑顔がチャーミングな優しさのかたまりのラミー・ユセフが個人的にとてもツボだった。

私も歳を取ったらベラに本を渡す老婆になりたいし、ゴッドがおうちで飼ってる動物たち全員の図録が欲しいです(ランダムトレカでも可)
Ayu

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