今作はジャンルとしてはクライム映画に相当すると思うけど、ただ若者がイキって犯罪計画を行うようなクライム映画とは違う。
彼らのそれはどこにもやりようのないフラストレーションの表れでもあり、何が叫ばれても変わらない世界への怒りの表れでもあり、自分たちが生きている意味の確認、存在証明でもあると思う。
"普通"を生きている人からすれば、「こんなことに頭脳と労力をかけられるなら、もっとなんかこう…」と思う感覚も生じるかもしれない。
というか、そんな感覚が生じるように、時間をかけて丁寧に丁寧に、"普通の人"にはマネできない執念と行動力を見せつけてくれる作りになっている。
でも彼らには"これしかない"んだ。「もっと他のことを」と思えるのは、外の世界や多様な可能性を知っていたり、整った教育を受けていたり、良い環境で育っている証拠。
彼らの育った価値観では、これが世界に自分を訴えかける最高の方法なんだ。
今作はそんな、今を生きる若者の必死のあがきを、どこまでもリアルに描き上げている。
これを受け止めた同じような層が"こっち"方向に影響を受けてしまうのもよくわかるし、同じでない層はこれを観て、"バカな若者"と見下すのではなく、こうなってしまう世界を見つめ直す機会になればと思う。
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