ドント

九十九本目の生娘のドントのレビュー・感想・評価

九十九本目の生娘(1959年製作の映画)
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 1958年。日本のチベット(作中表現ママ)、岩手の山奥に、奇怪な因習を持つ集落があった! 10年に一度の忌まわしい儀式が失敗した時、惨劇の幕が開ける! ……みたいなあらすじからするとゲテモノ映画だが実は旧文化と新文明との軋轢、そして一握りの情愛を描くまあまあ真面目な映画。
 血なまぐさい儀式ではあるのだが「狂った部落(差別用語に非ず)」ではなく、以前村と対立したがゆえにどうしようもなくそれに囚われているという描かれ方をしているのが結構丁寧に感じた。むしろ山を降りねばならぬとの掟を「馬鹿馬鹿しい。祭りは皆で盛り上がるべきですよ」と一蹴する神主の方が頭が固く見えさえする。まぁ儀式のために人を殺すのはメッチャまずいけど、それはそれとして。
 終盤は儀式と平行してまさにムラvs文明(弓・岩石と銃!)の戦闘映画と化すダイナミズムがすてきである。人間味ある描写をされる部落の人々と、軍隊の如くズンズン進んでくる警官隊。罠まで出てきてベトナム戦争を先取りしたかのようだ。まだピチピチで同じく新東宝の「海女映画」に出ていた頃の菅原文太もいるがあまり目立っていない。教科書のような怪しさと道理がわかる部分を両面併せ持つババアと、村の掟に拘泥しているが狂ってはいない長が好演だと思った。
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