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首のinotomoのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.9
時は戦国時代。天下統一を目論む織田信長は、家臣の荒木村重が謀反を起こし雲隠れ。跡目を継がせることを餌に、他の家臣達に、村重を探して来るよう命じる。信長の跡目を継ぎたい野心を持つものの中には、百姓から大出世をして成り上がった、羽柴秀吉がいた。また、明智光秀は、村重との間に誰も知らない繋がりを持っていた。
監督、脚本、編集は北野武。

大河ドラマで描くような、カッコよく正義に満ちた時代劇ではなくて、もっと泥臭い印象の時代劇。北野作品ならではのバイオレンスが満載で、首がポンポン飛ぶ飛ぶ。エキセントリック過ぎる信長、まともな人間が全然いなくて、おまけに男色まで絡めて(あの時代には当たり前のようにあったと史実で明らかになっているとのこと)ディープな味わいの、まさに「アウトレイジ」の時代劇バージョン。役者もみんな豪華で、キャラクターもそれぞれ個性的でよく描かれているので、演技合戦も楽しめる。儲け役だなと思ったのは、村重役の遠藤憲一。徳川家康役の小林薫は、飄々とした演技がさすがで絶妙だなと思った。曽呂利役の木村祐一は残念ながら役不足。

何度も映像化されてる本能寺の変、遺体が見つからなかったとされる信長の最期がどんな風だったのか、光秀の迎える最期の描き方も含めて、オリジナリティあって面白かったのだけど、全体的にクライマックスがどこだったのかがわからず。いつやられるかわからない、騙し合いの中の首とり合戦、その中のスリリングさがあまり感じられなかったのが残念。また、バイオレンスと緊張感の中にもユーモアを交えるのが北野作品ならではと思うのだけど、そのユーモアが少し中途半端だったように思える。秀吉、秀長、官兵衛の3人のシークエンスがその部分なんだろうけど、私はあまり笑えず。

そして一番残念だったのは、信長役の加瀬亮の使い方。昔から加瀬亮が大好きで、今回の信長役はすごく期待していた。かなりイッちゃっている信長を熱演してはいるけど、ずっとテンションが同じで、緩急がなくて、見ていて疲れてしまった。本人はとにかく楽しんで演じようと心がけたらしいけど、もっとうまい見せ方があったように思い残念。

残念に思ったのは演出のせいなのか、編集のせいなのか。お金はかかっていて、セットも役者も衣装も豪華なのだけど、期待値高かっただけに、残念な印象が残った。海外の反応はどうだったのか、気になるところ。
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