2023年12月22日(金曜日)、TOHOシネマズ新宿のスクリーン6、08:20〜10:40上映回で鑑賞。
(平日朝一の上映ということもあって客入りは疎ら、やや小さめのスクリーン6で3〜4割埋まっている程度。客層は年齢高め)
とても良い映画だった。ストーリーはあって無いようなものだから、単純に「泣ける!」とか「感動した!」って感じではなく、自然にクスッと笑えたり、気がついたらうるっとしているような、じわじわと色々な感情がこみ上げてくる静かでステキな映画だった。
休みの日にふらっと映画館に立ち寄って一人でゆっくり鑑賞するには最適な映画だと思う。
自分が三十路のオッサンになってから、なぜだが映画や小説に登場する孤独な男の日常、特にミニマリスト的な生活描写やルーティンなんかがあるとやけに心惹かれることがある。
例えばデンゼル・ワシントン主演のアクション映画「イコライザー」で、冒頭20分ほど孤独な男が淡々とミニマリストな生活を送るシーンで始まるが、私はこの冒頭部分がとても気に入って、このシーンの為だけに5回以上この映画を劇場で鑑賞した。
ところが「イコライザー」にしても他の類似作品にしても、大抵はこういったミニマリストな生活描写は本筋とは別にあって、本筋がステーキだとするとあくまでもステーキを引き立てる付け合わせ、マッシュポテトや人参グラッセでしかないわけだ。
だけど本作では映画の大半が主人公の平山(役所広司)の生活描写に費やされるという言うなればマッシュポテトとか人参グラッセしか出てこない作品なわけで、私にとっては大好物だから良かったものの、そうでない人には確かに人を選ぶ映画ではあるのかもしれない。
ただ人を選ぶ作品ではあることは確かだけれど、役所広司をはじめとした登場する役者が全員素晴らしかったし、ヴィム・ヴェンダース監督の目を通した東京の風景がどのシーンでも新鮮でキレイなので、眠気を催す様な退屈さとは無縁の作品であることだけは確かである。
あと意識高い系作品にありがちな、作品内で視聴者に説教したり啓蒙してきたりする場面が皆無だったのも高評価の理由の1つである。