ベイビー

PERFECT DAYSのベイビーのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.5
ヴィム・ヴェンダース監督が日本(東京)の美しさを綺麗に切り取ってくれました。素朴ながらもじんわりと心に沁みる作品でした。

東京でトイレ清掃員として働きながら一人暮らしをする男の物語。淡々とした日常に訪れるささやかな変化が、素朴な生活の中にアクセントを付けてくれます。そして何十年聞き続けたカセットテープの音楽や、古本屋で買う100円の文庫本も、日々の生活に彩りを与えてくれます。

昨今、海外から訪れる外国の人たちが口をそろえて言うのは、日本の街並みがとても綺麗だということ。路上にゴミ箱が設置されていないにも拘らず、道端に全然ゴミが落ちていないことに驚かれるそうです。また、日本のどの公衆トイレも一流ホテルのトイレみたいだとビックリされ、更にそれが無料で使用できるということに大変驚かれているそうです。

僕も公衆トイレを気持ち良く利用しているうちの一人。いつも当たり前のように利用しているトイレも、実は誰かが綺麗に掃除してくれていることなんて、日常だとつい忘れがちになってしまいます。当たり前な日常は、決して当たり前なのではなく、名前も顔も知らない人たちの陰日向の働きのもと、何も不自由のない日々を過ごせているのだと、平山の姿を見て改めて実感しました。

川が海に繋がるように、自分の些細な行動がやがて多くの人の日常に繋がる。そして正しく務めてきた毎日の積み重ねが、自分の人生を色濃くさせて行く…

本作はそんなひた向きに生きようとする人間の“陰日向”にスポットを当て、そこに見る人間の美しさを映し出した作品だと感じました。繊細で静かな物語の運びは「パリ・テキサス」を思い出させ、陰に陽に日々を生きる平山の姿は、美しい人生の在り方を示してくれているようでした。

素朴な味わいを感じながらも、人の感情をしっかり描ききるヴィム・ヴェンダース監督の演出は本当にお見事。観ているだけで心がピカピカに洗浄される、とても美しいお話でした。新年一本目に相応しい作品だったと思います。

心に刺さる場面がまだまだたくさんあったので、その他の感想はコメント欄に入れておきます。

それにしても東京の公衆トイレがどれもオシャレすぎる! 何、あのスケルトンのトイレは⁉︎ 今度東京へ行く機会があったら聖地巡礼(公衆トイレ巡り)をしてみようかな?
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