ベイビー

ある男のベイビーのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.5
タイトルにたがわぬ「ある男」の物語

全体的にきれいに纏まった作品だったと思います。立板に水を流すようにさらさらと物語が進み、とても観やすい作品でした。ミステリーへと繋がる導入も良かったですし、物語の締め方も納得いくものでした。

たださらさらと進み過ぎて、何も心に引っかかる要素がなかったというのが本音です。ミステリーとして“ある男”の過去を探す場面は、丸々「砂の器」を観ているようで、あまりにも使い古された“ある男”の生い立ちに既視感さえ覚えます。

本当はもっと、闇のブローカーについてや、その先にある在日差別などを深く描きたかったのだと思うのですが、上映時間の都合とか色々な制約とかが絡まり、このような纏め方になったのだと勝手に想像してしまいます。

それと、主役の妻夫木聡さんや、安藤サクラさん、窪田正孝さんなど、皆さん素晴らしい演技をされていたのですが、小見浦を演じられた柄本明さんは、関西弁がイマイチだと感じました。もちろん演技は良かったのですが…

小籔さんの本物の関西弁を聞いてたら、どうしてもあのエセ関西弁には違和感が残りますよ。そもそも小見浦というキャラが、ハンニバル・レクターの劣化版にしか見えなくて、これも既視感を覚えてしまった要因の一つに。

あと、ラストもイマイチ分かりませんでした。何か雰囲気のある絵画を使って、何かそれらしいことを表現しているは分かるのですが、僕の頭の中でサカナクションの「エンドレス」が再生されただけで、それ以上何も思いつきませんでした。
ベイビー

ベイビー