最近FilmarksのTrend上位に「十二人の怒れる男」が目立つようになったけど、なるほどこういうことか(←と勝手に本作の影響かと思い込んでいる)。152分という時間のうち半分くらいが法廷シーン。その検察側と弁護側とのユーモアを交えたやり合いが、とてもリアルでスリル満点。もうそれだけで面白い。
出だしでの事件の成り行きと、ミステリー要素からサスペンスへ移行する切り替えがとても早く、序盤から他殺か自殺かのやり取りをメインに言い争っていて、このまま最後まで話が保つのかなあ? と思ったりもしたのですが、そんな心配も要らないくらい終始見応えがありました。
作品の中で二度ほど「フィクションの中に事実を混ぜることで、より話の印象が良くなる」みたいなことを言っていましたが、その台詞によりサンドラへの猜疑心がどんどん膨らんでしまい、真相の行方を探る緊張感が途切れることはありませんでした。
断片的な証拠と不確かな記憶によって作られて行く真実。この作品での“真相”とは判決に及ぶまでのストーリーそのもの。「フィクションの中に事実を混ぜることで、より話の印象が良くなる」ものだとすれば、この物語の結末(真相)も何となく違った形に見えてしまうから不思議です。
あのような結末になったものの、未だ藪の奥の闇に真実が隠れていそうで、その不確定に揺れる余韻が、どこかダニエルという少年の心をそのまま映し出しているよう感じられるのです…
サンドラを演じたザンドラ・ヒュラーさんの演技も素敵だったのですが、なんと言ってもダニエルの演技は素晴らしかったです。物語のゲームチェンジャーという難しい役割を担い、それを見事に演じられたと思います。
今度久しぶりに「十二人の怒れる男」観てみようかな。