このレビューはネタバレを含みます
古びたアパートに一人暮らしをしている中年の寡黙な清掃作業員・平山の何気ない日常を描いた作品。
本作の主人公・平山はスマホは持っておらず、旧時代的な生き方を歩んでいる。これだけスマホが普及し、SNSが活性化した現代において平山のような生活は一見退屈に思える。
しかし、作中の平山は読書、カセットテープ、銭湯、穴場的な酒場での食事など本人的には楽しんでいるように見える。
この作品のキャッチコピーである「こんなふうに生きていけたなら」をまさに体現している。
しかしながらラストの平山の表情には、日々の生活を楽しみながらも現代社会になかなか適応できず生きづらさというものを感じてしまっているという複雑な心情を表現しているかのように思える。
そんな平山を演じた役所広司さん、素晴らしい味のある演技でさすがでした。
ただただ一人暮らしの中年男の毎日のルーティンを最初から最後まで見せられるだけですが、単調な生活の中でも些細な幸せは実はそこら中に転がっているのだというのを気づかせてくれた本作は実にハートフルな傑作でした。
