落下の解剖学
2023年のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞作品ということで、公開前から楽しみに。タイトルが "落下の解剖学" なので、医学的観点から真実に辿りつくようなものをイメージしていたが、そんな単純な物語ではなかった。
人里離れた雪山の山荘で、視覚障害をもつ11歳のダニエルが、血を流して倒れていた父親のヴァンサンを発見する。悲鳴を聞いた母親のサンドラは救助を要請するが、ヴァンサンは既に息絶えていた。
事故死なのか、自殺なのか、それとも他殺なのか。裁判の過程で多くの事実が出てくるたびに、"やはりそうだ" "いややっぱり違う" という感じで、観客を惑わせる脚本が秀悦。最後まで緊張感が続くので前のめりで見入ってしまった。
そういった意味では解釈を巡り色々と盛り上がれる作品ではあるが、"モヤモヤ" が残るのも事実。そこが受け入れられるか否かで評価が分かれそうだが、私はしっかりと楽しめた。
主人公のサンドラを演じたザンドラ・ヒュラー。彼女を初めてスクリーンで観たのは "ありがとう、トニ・エルドマン" で、その大胆な演技に驚いたが、本作では複雑な設定の主人公を繊細に演じ切り、アカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得。
