カテリーナ

関心領域のカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

己の関心領域を問う

とりとめのない予告編がいくつか流れ
場内の電気が消えるても長四角のスクリーンは黒い色のまま いつまで経っても映像に変わらない 鈍くて低い音楽が鳴り始めて暗闇から明るい午後の日差しにかわる
ようやく始まったかと安心するも
単調な生活の営みを見せられ瞼が重くなる
緊張感も何もあったもんじゃないが
ザンドラ・ヒュラーの足首太いなぁとか
思いながら 前方に顔を向け続ける
暫くすると 形容し難い音が低くなり続けていることに気がつく
「はじまったな」
アカデミー賞の音響賞を受賞している
音楽の鳴り方 耳障りで人の悲鳴にも聞こえるこの音楽は凄い 聞き応え大有り
エンドロールで流れる音楽も悪意に満ちてて圧巻の一言
アウシュビッツの収容所の所長 
ルドルフ・ヘスは壁一枚隔てた隣りに
夢の豪邸を建てて家族と共に暮らしている
隣りで大虐殺が行われているのに
枕に頭を乗せて眠れる?
ルドルフの妻はそんな事には関心は無い
全く無い 1mmも無い
なので夜はぐっすり眠れる
映画を見て寝落ちしている私も
次第に遠くから聞こえてくる嫌な音や銃声に慣れてくるように この妻も時を重ね
生活の一部になってしまったのか
ヘス家の赤ちゃんは常に泣いている 明るい庭で皆で楽しくテーブルを囲んでいても 夜四角いベットに囲まれていても腹筋を使ってありったけの泣き声を張り上げる 子守の女の人も辛そうだ
心配そうなお兄ちゃんは
「赤ちゃんよく泣くね」
「あら、あんたの方が泣いてたわよ」
母親の言葉が引っかかる
いつも泣いてる赤ちゃんは命を奪われた
人々の悲鳴を誰よりも強く感じて
いたのだろうか?
お母さんが家に招かれて娘や孫たちと
楽しそうに庭を見たりしていたが
夜になると隣から聞こえて来る不吉な音や
人を焼却する臭いに耐えられない様子
しまいには置き手紙を残して娘に別れも告げず帰ってしまう
本当は収容所の所長なんて仕事嫌なんだけどと、ルドルフが情けなく自分の愛馬におでこを付けて心を通わせている(ように見える)のは良かったけど
ユダヤ人のかわい子ちゃん(部屋に入ってくるなりカバンを床に乱暴に放り投げる)をいやらしい目で舐め回す その後カット変わり下半身を拭く場面で幻滅する 

町山藤谷のアメtubuという動画で
この場面について話してる内容がとても印象に残った 藤谷文子が
ゴシゴシと身体を拭く場面がとても効果的に使われていて これは、
(アウシュビッツ博物館で掃除婦が床を磨いたり窓を磨く行為含め)
監督のメッセージだと言及していた
「汚れを拭けば罪は消えるのか?」という
問いかけではないかと、それを受けて
町山智浩が「ある民族を全部消し去る事を民族浄化と言うんですよ 掃除の言葉が使われるんです 差別的な言葉です」
この二人の会話は 
まるでこの映画の本質を見抜いているようで脱帽した。
カテリーナ

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