でしょうかな

関心領域のでしょうかなのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
3.7
1943年、アウシュヴィッツ強制収容所所長を務めたルドルフ・ヘスとその家族の、収容所隣の邸宅でのあまりに平穏な暮らしを描くドラマ。
正直なところ、物語としての面白さはほとんど無い。本作の内容からしておそらく意図的なものなのだろうが、そうだとしてもつまらないものはつまらない。とはいえ、描かれている内容は現代に通じる、というか現在起きていることにかなり近しく、できれば観ておきたい作品ではあると思う。
この映画はヘス邸での出来事が大半を占めており、壁で区切られた収容所内部での出来事が直接スクリーンに映し出されることは無いが、「処理」の最中の音や、その後の結果が邸宅の中、壁の外に持ち出されることで何が起こっているのか否が応でも理解させられる。それでも進むうちにそうした非人道的な音にも飽きてしまい、ここで映画の中の一家らとリンクしている自分に気付かされ、なんとも嫌な気分にさせられる。そして終盤、それまで描かれてきた出来事が現在、さらには未来と地続きであることを分からしめる映像が挿入される。最後のメタ的な演出にズルさを感じなくもないが、監督の切迫感の現れとも取れるかもしれない。
映画で描かれたヘス夫妻の残忍さは、単純に現代社会の大多数の人々と重ね合わせられるものではない。彼らは虐殺と収奪を深いところまで認識し、積極的に関与し、そこから得られた血みどろの利益を存分に謳歌していたのだから。しかし比較にならなくとも、少なくない人々が現在進行形の虐殺と収奪を見て見ぬ振りか、それが受け入れるべき現実だと黙認している。出来ることなら、自分はりんごを埋めていた少女のようになりたいと思うし、多くの人がそうあれるようになってほしいと願う。
でしょうかな

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