カツマ

ブラッド・アンド・ゴールド ~黄金の血戦場~のカツマのレビュー・感想・評価

3.9
その村は血で血を洗う狩場となった。金塊は人を狂わせ、戦争という魔物と共に修羅となる。銃声は無慈悲なまでに乱射され、ただひたすらに死体の山を積み上げた。果たして生き残るのは誰なのか?死亡フラグは全員に立ち、このストーリーを狂気の沙汰へと突き落とす。こんなはずではなかったと、思ういとまもないほどに。

本作はNetflix制作のドイツ映画であり、メガホンを取ったのは『THE WAVE』で脚本を担当し、その後は監督へと転身したペーター・ドアヴァルト。ナチスドイツの暴虐が横行した時代を背景に、終戦間際の一触即発の雰囲気をそのままバイオレンスなカオスへと変幻した、カルト臭強めの作品である。そこにあるのは、タイトルそのままのカネに目が眩んだ人間達による血まなこの殺し合いに次ぐ殺し合い。そこそこのメインキャラでもアッサリと退場させてしまうため、シンプルにハラハラドキドキのサバイバルアクションとして楽しむことができるだろう。一寸先は崖の下。ギリギリの淵で踏み堪えるのは果たして誰だ!?

〜あらすじ〜

1945年春。ナチスドイツはアメリカ軍を中心とする連合軍に押し込まれ、敗戦が濃厚となっていた時代。ドイツの脱走兵のハインリヒは親衛隊に狙われて命からがらの逃走を続けていた。しかし、ついには追い込まれ、木に吊るされ、彼は今際の際を見た。その時、ハインリヒの脳裏に浮かんだのは娘のロッテの姿。彼が娘に会うことは叶わず、そこで命を落とすはずだった。
が、そこに農場の娘エルザが現れ、ハインリヒは一命を取り留めることに。ハインリヒはエルザの農場に匿われ、傷の手当てを受けることとなった。
一方、ハインリヒを処刑した(と思い込んでいる)親衛隊は次なる目的のためにとある村へと向かっていた。その目的とは村に隠されているという金塊の強奪で、親衛隊は村人達に金塊の在処を聞いてまわっていた。それと共に親衛隊の中佐は食糧の調達を部隊に指示。曹長を中心としたグループがエルザの農場にも出没し、エルザは兵士たちに暴行されそうになるも、隠れていたハインリヒの攻撃が兵士の胴体を突き刺して・・!

〜見どころと感想〜

他の方のレビューにもある通り、簡潔に言うと今作はタランティーノフォロワー映画である。ナチスドイツを題材としているという点で『イングロリアス・バスターズ』に酷似しており、また、もちろんオリジナルを越えることは出来てはいない。とはいえ、次に誰が死ぬのか分からない展開は予想不可能でエンタメ性が高く、アクションシーンがさほど派手ではないながらも退屈させないため、脚本の旨さが光った作品とも言えそうである。

主演のロバート・マーサーはドイツ産の映画にも何本か主演しており、有名どころだと『1979命をかけた伝令』にも出演していたようだ(どこに出ていたかは定かではないけれど)。エルザ役を演じたマリー・ハッケは初見の女優さんだけれども、男顔負けの闘志でナチスドイツを次々と粉砕。ジャケットにもあるバズーカ砲をぶっ放す描写も爽快である。他にも曹長役の役者さんが悪役感満載のインパクト。村人役も含めて悪人ヅラを揃えた配役は絶妙なセンスであった。

突然鳴り響く素っ頓狂なBGMもタランティーノ臭全開で、それもあってかテンポの良さ、内容に反して胸糞臭が薄い点も本作のハードルを下げる要因になっていると思う。後半まで生き残るキャラはボロボロ、やられるキャラはアッサリ退場という分かりやすさも好印象。ほぼ全てのキャラクターが修羅と化すので、穏やかなシーンからの反転を楽しみつつ、どこに転がるのか判然としない狂気乱舞の宴に期待しながら見てほしい。頭を使う映画に疲れていたら、時にはこんな映画を選んでみてはいかがでしょうか?

〜あとがき〜

テイストも内容もめちゃタランティーノなので、そうと分かれば楽しく観れる作品です。狭いエリアでのサバイバルにも関わらず中弛みしていないところも見事ですね。Netflix映画の中では当たりの部類かなぁと思います。

欲に目が眩んだ人間達による滑稽なダンスという感じでしょうか。案外終わり方はあっさりしているので、そう言う意味でもかなり見易い映画だったと思いますね。
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