ひこくろ

変な家のひこくろのレビュー・感想・評価

変な家(2024年製作の映画)
3.3
日本のホラー映画のいいところと悪いところが両面出てしまった作品だと感じた。

いいところは、切り口の上手さ。
一見、ホラーとはつながらそうな「間取り図を見て家を想像する」という行為が、ホラーとして成り立つというのは面白い。
推理だけで進む、というのもミステリー的要素として十分に魅力的だ。

一方で悪いところは、その切り口の上手さを活かしきれていないところ。
間取り図で推理する、という点が最大の魅力で面白さだと思うのに、その部分は早々に終わってしまい、あとは定番の田舎の因習や呪いという側面ばかりが描かれてしまう。
もちろん、そういう内容が悪いというわけではない。
古くは金田一耕助シリーズ、最近なら「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」など、そういう内容でホラーとして成功している作品はいくらでもある。
が、そういう映画は最初からその内容で勝負している。
この映画のように「間取り図推理」という面白さを売りにしながら、中身は因習ものというのでは、さすがにチープ感は否めない。

さらによくないのが、驚かす系の演出をやたらと入れてきたところ。
ホラー部分に自信がなかったのか、それともサービスなのかはわからないが、こういうじわっと怖くなる系の映画に驚かし系の演出ははっきり言って不要だろう。

せっかく題材は面白いのに、やっていることは結局、よくあるホラーの模倣に過ぎない。
さらに言うと、ミステリーの部分でも、ほとんどが告白という形での種明かしになっていて、正直に言って興覚めだった。
新しいことをやってるようで、あるのは古いことばかり。
しかも、古いことに対する敬意が見えるわけでもない。
こういう要素を入れて組み立てれば、ほらホラーでしょって感じがして、個人的にはかなり気に入らなかった。

いっそのこと、本当に間取り図推理だけで映画にしたほうが、よっぽど新鮮で面白かったと思う。
そこで勝負しなかったのは、この映画の敗因だと思えてならない。
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