ひこくろ

みぽりんのひこくろのレビュー・感想・評価

みぽりん(2019年製作の映画)
4.2
ラストの展開をどう受け止めるかで、評価がはっきりと変わる映画だろうと思った。

芸能界とかアイドル回りの世界って、冷静に見ると滑稽だったり、異常だったりすることが非常に多い。
そういう様子を映画は極端にデフォルメして突きつけてくる。

わけのわからない特訓を強いてくるボイストレーナー。
適当な対応でその場その場を誤魔化してやり過ごすプロデューサー。
しつこくアイドルにまとわりつき、それを愛情だと豪語するファン。
歌が超下手糞なのに、人気投票でデビューが決まるアイドル。
他のメンバーを推してるファンを奪おうと色仕掛けで迫る同じグループのアイドル。

どれも極端に描かれてはいるものの、ほとんど現実と変わらないだろう。
そういうおかしなことが「おかしく見えない」ことこそ、おかしいのだ、と映画は伝えてくる。
しかも、そこに茶化しや悪ふざけを一切入れない。
だからこそ、余計にその世界の異常さが感じられてくる。

絶妙に可愛くない主人公のアイドルだったり、普通のおばさんに見えるみぽりんだったり、キャスティングも非常に上手い。
デフォルメされているという点を除けば、ほとんどリアルに徹しているという感じなのだ。
それが、おかしさや、不気味さや、異常さ、怖さをしっかりと生んでいる。

と、そこまでは絶賛したいが、ラストですべてが破綻してしまう。
インディーズ映画界のカルト映画、と呼ばれる理由は、たぶんこのラストにこそあるのだろう。
そういう意味では、爪痕を残すためにも必要な部分だったのかもしれない。
が、結局、いろんなことをうやむやにされてしまったという感じも受けてしまう。

それでも、アイドルということを真剣に考え抜いた、というのは伝わってくる。
むちゃくちゃに見えるラストも、その一点だけは裏切っていない。

僕はラストを評価しない派だけど、これが真摯なアイドルの映画であることには心から頷く。
キワモノに見えて、大真面目なアイドル映画だと思う
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