えびちゃん

瞳をとじてのえびちゃんのレビュー・感想・評価

瞳をとじて(2023年製作の映画)
4.0
エリセの映画へのまなざし。なによりエリセの作品をずっとずっと待ち続けたファンへのとっておきの贈り物のような作品。そしてエリセ自身がいちばんのエリセファンなんじゃ?と思わずにいられなかった。
2023年の作品にしてフィルムの質感の映像を観られるとは。とても美しい導入で、前のめりになってしまった。という感慨にいっぱいいっぱいになっているところに、場面が転換して劇中劇であると気付く。エリセ作品がこんなにツルツルの映像になるとは!と時代の流れをひしひし感じつつも、やわらかな画、誠実な画があちこちにみられてエリセらしさに泣きそうになった。
『ミツバチのささやき』、『エル・スール』と同様に本作も寄り添えない家族の悲しさが満ちている。"いちばん近くにいるのに、心は誰より遠い"ということのやるせなさ…。
劇中の映画と同じように"人探し"をしていく中で、自分の人生を見つめなおしていく主人公のミゲルはエリセが投影された人物だろう。創作から身を置き遠く離れたところへいったとしても、映画の神は彼を掴んで離さない。作品が与える力を置き去りにしない。
エリセはきっとこの作品を自身の最後の作品にしたいんじゃないだろうか。やさしくやわらかく瞳を閉じるように幕が降りた。
えびちゃん

えびちゃん