えびちゃん

枯れ葉のえびちゃんのレビュー・感想・評価

枯れ葉(2023年製作の映画)
5.0
毎日、毎朝、ウクライナだのガザだのとそこで起こっている正視しがたい凄惨さに胸が痛む、荒む。そのくせ遠い国で起こっていることだのと心まで距離をとる。
人と人との距離は物理的な距離をこえると常々思っていたことが、あまりにも薄っぺらかったと痛感する。恥ずかしい。
フィンランドの街かど。幸福な国ランキングで常に上位なフィンランドでこんな風景があるのかというのはカウリスマキ作品でいつも驚く。他人の芝生は青い。でも、「0時間労働」だの、法を犯した訳ではないのにワンアウトで解雇だのということを見るに、世界中がこんなにも衰退していっているのかと生々しく感じる。遠い国で起こっているファンタジーではなく、あくまで間近に起こっている事実なのだ。フィクションなのだ。映画という墓標にしっかりと刻まれる。
悪戯なすれ違いを経てささやかな幸せが成就していくさまに、今ただ求めているのはこの安らぎだよなと確信する。誰もが安全で安定した職があって健康に暮らすことがこんなに尊いことだとは思わなかった。
マッティ・ペロンパーが憑依していた最後のアンサの笑顔で大号泣。
わたしはカウリスマキの映画も愛も信じるからな。いちばんのクリスマスプレゼント。
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