えびちゃん

ファースト・カウのえびちゃんのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.0
寄るべない男たちの哀しきアメリカン・ドリーム。肩寄せて夢を語り合う姿、添い遂げる姿はまるで長年連れ添った夫婦のようだった。
ケリー・ライカート作品で初めて「ぅぉお面白い!」と思えた。3本目だけどね。ベスト・オブ・ケリー・ライカートです。
ハラハラドキドキする作品が苦手なわたしだが、冒頭に結末を開示してくれていたので終盤からのあれよあれよの展開もなんとか正気を保てた。
村落にやってきたただ一頭の牝牛。盗んだミルクでドーナツ作って一山当てる、それだけの単純なストーリーに孤独と悲しみ、それを埋め合う友情の切なさ美しさが溢れている。
自然の映し方が本当に素敵。枯れ葉を踏み締める音まで美しく、その一方で鼠色の空、湿っぽい新潟の秋みたいな嫌な感じの自然があったりと、懐かしさを感じる。真摯なナマっぽさがある。かびっぽい匂いまで思い起こされた。
心優しいクッキーに懐く牛ちゃんの目がとてもかわいい。高級な血統で、珍重されているはずなのに名前ももらえない孤独な牛ちゃんは彼ら2人をうつす鏡のようだった。
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