えびちゃん

異人たちのえびちゃんのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.7
本当に1番会いたい人は今ここにいない人なんだよな。化けてでいいから会いたいよな、と改めて思う。
幻想的な作品で、怖くないホラーというか、人間の精神世界というのは人智をはるかに超えてゆく、ということをしみじみと感じた作品だった。
ロンドンのど真ん中、摩天楼のようなタワマンにたった2人しか住んでいないという浮世離れした設定がもう異様。今思うとところどころゾッとするシーンが差し込まれていたな。オペラグラスで覗くほど離れた人物が手を振る。静止しているはずの主人公が合わせ鏡で逆に動く。むしろ異人たちとのコミュニケーションの方が圧倒的にナチュラル。両親の不在とゲイであることで閉じた世界で生きてきた彼自身も片足を突っ込んじゃっているのかも。
ポール・メスカルの繊細で悲しい佇まいに心を掻きむしられる。アフターサンを思い出して改めて泣ける。
アンドリュー・ヘイの作品の核は"ソウルメイトの渇求"なんじゃないかと思う。
WEEKENDでのラッセルとグレン、荒野にてのチャーリーとピート、さざなみのシャーロットランプリングと夫(は、その関係性を構築できなかったが…)。
人であっても人ならざるものであっても心を通わせ合う、注ぎあうという関係をヘイは本当に求めているのだな。
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