えびちゃん

デカローグ デジタル・リマスター版のえびちゃんのレビュー・感想・評価

4.5
587分完走。ものすごい充足感と同時にものすごく暇人だと我にかえった。

#1 ある運命に関する物語
幸福の象徴である鳩に、血付いてるんですけど……。
神を信じないお父さん。計算できるものだけを信じてきた。コンピュータこそが信じられる"神"のようなものだったのだろう。全知全能の神に裏切られた時、マリアさまの顔に熱い涙が流れる。#1からド重い。けどかなり好きなエピソード。

#2 ある選択に関する物語
語り口がよすぎる。物語と同時進行でお手伝いのおばあに昔話を聞かせわかる、おじ医の過去。
こういう打算的でしたたかな女性、嫌いじゃない。だけどおじ医が一枚上手でした。

#3 あるクリスマスイヴに関する物語
冒頭、サンタさんに扮装した男と#1のパヴェウのお父さんと鉢合わせるの不条理すぎる。このお話嫌い。男も女も頭悪いしプライドなさすぎて嫌い。死ぬ死ぬいう女は絶対に死なない。自分の機嫌くらい自分で取るんだよ、孤独との共生を学んでくれ大人なんだから。

#4 ある父と娘に関する物語
私もお父さんに会いたーいと思いながら見てたら急にぶん殴られた。野島伸司が好きそう。そもそもなんでこんな話を思いつくんですか。カメラのキマリ具合がソークール!

#5 ある殺人に関する物語
えっ、この黄色いフィルターがかかった覗くようなカメラわざとらしくてきらい…そもそもこれ誰目線の話なの。作風が変わっちゃってるじゃん…と思ってたらまたぶん殴られた。これは、裁判の傍聴を辿ってたんか……。
殺しを犯す者、死刑を執行する者。
誰も誰をも裁けないはずなのに人間の思い上がりはどこまでも尽きない。全ての人間が"殺人"に加担している。スクリーンを覗くわたしたちもだ。
全エピソード中、唯一泣いた作品。シュークリーム買って帰った。

#6 ある愛に関する物語
これは愛じゃなくて犯罪だし犯罪です。おうちまでストーキングして接触できた嬉しさに牛乳手押し車に乗せてるんるんで走るところ良すぎる。#9の不能夫とすれ違う。

#7 ある告白に関する物語
汝、盗んではならぬ
これは厳しい。昼ドラにありそう。
盗まれたのは我が子と母になる権利。マイカとアンカ、母と子として同じ時間を過ごせなくてもふたりとも幸せになって欲しい。

#8 ある過去に関する物語
あぁ〜〜これは……。これこそポーランド人が向き合うべき過去なんだろうな。どの選択も間違いじゃない。もうこれは時代と政治の責任。誰もが過去と折り合いをつけられるわけじゃない。美談にしないところがリアルで誠実。

#9 ある孤独に関する物語
何でこんな話思いつくの?インポ夫と若くて魅力的な妻。若い間男。
体のつながりよりも心の結びつきを得られて良かったけど、結局また堂々巡りになると思う。。。エンドロールは夫の患者の歌うオペラ。良い。

#10 ある希望に関する物語
切手のおじい(#8)、亡くなっちゃった(涙)
このエピソードいちばんすき。唯一ユーモラスな作風。全て失ったけど一周まわって大事なものを得た兄弟たちがまた家族として歯車が回っていくことの嬉しさ。


10話どのエピソードから観ても大丈夫、とのことだったので都合がついた順1→2→3→4→7→8→9→10→5→6で観た。が、1→10の順で観た方が良い。
1話たった60分弱で語りすぎることも語らなすぎることもなく、テレビ用の作品でありながら示唆に富む作品性の高さに、ポーランドの文化、芸術への豊かさが羨ましい。どこの国でもいつの時代でもこんな作品は撮ることが出来ないだろうな。
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