Scarlet

哀れなるものたちのScarletのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

“エロチックな大人の童話に込められた、女性のホンネの姿”

衣装も豪華客船もお屋敷のセットもファンタスティックでタイムレス。
“自分のお腹にいた胎児を移植された女性”という、あり得ない設定。
これは童話の世界。

本作は、ベラ(エマ•ストーン)という不思議な存在を主人公にした大人の童話。

そして、古今東西、多くの童話が寓話であるように、女と男の真実 を描くのに、この大胆な設定が必要だった。

分かりやすい寓話だ。

エマの奇抜な行動に、最初は”えっ?”と思うが、だんだん彼女に同化していく私達。

胎児の脳を持って生まれ変わったのに、自然に性欲の虜になり、オナニーをし、セックスの相手を欲する。

マズイ料理は吐き出す。泣いている赤ん坊を殺そうとする。年配の女性に、”もう20年もセックスしてないの?”と言ってしまう。

自分に好意を持ってくれて婚約した相手がいるのに、好色そうなダンカン(マーク•ラファロ)と世界を見る旅に出てしまう。
“帰って来たら、あなたと結婚するわ。”と悪気もなく言い残して。
生身の女がやりたくても出来ない事をベラは普通にやり、周りに影響を与えていく。

そして、一文無しになったダンカン を助けるために、普通に娼婦になり、男達から金をもらう。
ベラにとっては単にお金を稼ぐ手段なのに、ダンカンは嫉妬する。
あまりにも分かりやすい、純粋な女と邪悪な男の構図だ。

最後に、ベラがベラになる前の自分の夫が結婚式 をぶち壊しに来た時の彼女の行動も面白い。

手術前の自分の記憶が全く無いのに、夫と名乗る男について行ってしまうのだ。

これは、結婚に対する痛烈な風刺。
10年付き合った人とでも、今日知り合ったばかりの人とでも、結婚がギャンブルである事は同じだから。

最後にベラは、ベラとしての幸せと将来の目標を手に入れるが、そこには、あり得ない物を移植手術された、元夫がいるのだ。

最後まで小気味良い風刺がてんこ盛り。

エマ•ストーンと、ウィレム•デフォーのに演技力が光る。
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