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哀れなるものたちのTakaCineのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.3
【タブーに挑戦】
凄く下品で赤裸々で、グロくて痛々しくて、痛快でシュールで実に興味深い!

終始、主人公ベラ(エマ・ストーン)の生態を、魚眼レンズで観察する博士にでもなった気分で、映画を覗き込んでました🧐🔍️

一風変わった映画ですが、細部まで創り込んだ世界観が驚異的で、風刺と寓話がない交ぜになった摩訶不思議な物語は、大好物で大好きでしたね😍💕

『フランケンシュタイン』(1931)の恐ろしい人体実験、『レベッカ』(1940)のゴシックホラー、『昼顔』(1967)の女性的エロティシズム、『バロン』(1988)の風刺性、『ヴィドック』(2001)の奇妙なフルデジタル世界、『ナイトメア・アリー』(2021)の寓話性…

上記以外にも、様々な映画記憶を思い出させて、最後まで飽きることなく楽しめました😁🎶

好みはかなり分かれますが、僕には傑作の部類に思えました😍‼️
(現時点で、ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞🏆️)

映画の主なメッセージは、女性の復権や既存概念をぶっ壊すこと。

女性を"所有するモノ"や"性の対象"でしか捉えられてこなかった今までの男性優位の世界を、「女性としてタブーに挑戦し、自らの道を切り開く」ベラの珍道中が、非常に胸をすく想いでブラックコメディ調が面白かったですね😁

ヨルゴン・ランティモス監督作は初めてでしたが、他の作品も観てみたいです😌
(癖が強そうだけど)

《エマ・ストーンが凄い》
全編を通して、主演と製作を兼ねたエマ・ストーンの演技がとにかく素晴らしい😂‼️

数奇な運命を生きる"ツギハギだらけの"心と体を持ったベラ役を、無垢で怖いもの知らずな少女らしさ~成熟し自立した大人の女性へ変化していく巧みな演技力を披露し(『アルジャーノンに花束を(1968)』みたい)、更に全裸もSEXシーンも厭わない体当たりの女優魂には脱帽です🤩(お陰で過激な性的表現が多くて、R-18指定ですが💧)

始めは男性の添え物的な扱いだったベラ。性と知の喜びを知り、成長するごとに、出逢う男性陣を魅了し翻弄し破滅させていく小悪魔的な姿が痛快です😁

他の助演陣も演技巧者なマーク・ラファロ、ウィレム・デフォー、ラミー・ユセフ、ハンナ・シグラ(な、懐かしい!)なので、人間の温かさ・冷たさ・愚かさ・哀しさ・狡さ・愛しさなどなど、個々の人間性から溢れ出る濃厚な人間臭さが堪りません😂

特に、滑稽で愚かで愛らしいラファロの演技が秀逸でした👏(役はクズ男だけど)

《素晴らしき世界観》
最高の演技陣を裏で支える、豪華で緻密な世界観が眼福でした😂‼️

撮影:魚眼レンズ、モノクロ撮影、カラー撮影と目まぐるしく変化する撮影方法は、ベラの心象に合わせて変えていると理解しましたが、魚眼レンズは少し画面が見にくくて好きではなかったかな~😢

性の喜びを知ってから、モノクロ世界がカラー世界へ変化するところは、露骨すぎて思わず笑ってしまいました😁

衣裳:男性も女性も衣裳が素敵です😍✨ベラは青・赤・白のドレスが繊細で華やかで美しかったですね👗(外観は、どこかフリーダ・カーロに似てる気がしました)!
印象は『ドラキュラ』(1992)の豪華な衣裳らしかったです。

美術:アルベール・ギョームのゴージャスで古風なルックから、ジャン=ピエール・ジュネのシュールで独特な映像ルックまで、贅沢で奇抜なビジュアルが楽しすぎて、これだけでも映画館で観るべき!と声を大にして言いたい🤗‼️
本作の映画美術は、ぜひ迷い込んでみたいと思わせる、絢爛豪華なビジュアルに溢れていて最高でした😂‼️

音楽:現代音楽的な雰囲気で、クラシカルだけど不協和音が散りばめられた劇伴は、『サイコ』(1960)みたいで不快でドキドキしてしまいました😓

《備考欄》
世界の残酷さをベラが知ってしまう場面は、ベラと同じく心が苦しくなりました😭

僕の好きな『哀しみのトリスターナ』(1970)みたいな、美しく逞しき女性と愚かすぎる男性たちの物語。
本作でも、ある男性への復讐がかなり怖い💦

女性に権利や自由を与えなかったのは、女性たちが成長し台頭することで、男たちが「哀れなるものたち」になりたくないから…なんでしょうね😢

愚かなるもの、それは男。

《2/5追記》
※少し加筆します。
人間は様々な認知バイアス(先入観、偏見、思い込み)、親からの影響、周りの環境、トラウマ、社会通念の影響を常に受けていますね。意識的・無意識的に思考や行動が支配されてしまいます。そこに整合性がなかったりします。その結果、自分が人を傷つけたり、人から傷つけられたりしてしまう…😰

哀れなるものたち、そんな人間全般を指しているのかも?と、みなさんのレビューを拝見して思い直してました。
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