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哀れなるものたちのhiyoriのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.8
ヨルゴス・ランティモスの作品。女性としての抑圧された個から違う世界への気付きを与えるための寓話性を持った作品としては「バービー」と限り無く共通している。しかもコメディーというところまで。故に過去作と比較して分かりやすい映画にはなっているが、演出は勿論の事、劇伴から展開まで逃すことなくクレイジー。魚眼レンズ等を駆使した観察視点で描く手法はまさにランティモス仕込みで「女王陛下のお気に入り」に通ずる。肉体的、精神的に支配されることを本能で拒み、生きる為の思想や観念を自ら学習する。そういった女性達の行動をも阻む男の醜さといったら酷いものだ。今日までの女性史に当たり前に存在しているような歪さを歪なまま描写する心意気、製作に加わるエマ・ストーンの懸ける思いすら伝わってくる。ただこの世界観にこの題材が真正面から正しいかと言われれば疑念は残る。「プロミシング・ヤング・ウーマン」「あのこと」等女性についての映画で意欲的な作品はあるが、現代との距離感のとり方についてはもう少し考えたいと思う。
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