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哀れなるものたちのikustatinoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
『哀れなるものたち』

バロック絵画×スチームパンク、どこかミシェルゴンドリーを思わせるようなイノセントなルックが印象的。ただしお洒落な見た目に反して複雑怪奇でいてR18指定。
一言で言えば女性版フランケンシュタインなのだが、扱うテーマはとても一言二言では片付かないダークホラーファンタジー。

無垢なる人造人間ベラは好奇心から研究所を抜け出し冒険の旅へ。急速に成長してゆく彼女の飽くなき知的探究と幸福追求は、旅の目的を自己実現へと変化させてゆく。

人に内在する可能性に外的影響が加わり成長してゆく(大人になってゆく)姿を可視化するとこうも刺激的かつ暴力的になるのかと驚いた。

ジェンダーの描き方で賛否分かれているそうだけど、本作の最も残酷な要素は"人間は誰かを蹴落とし傷つけ裏切らずには生きられない"という事の可視化であると感じていて、それが搾取の主従関係を様々なレイヤーで生み出している事、公然の秘密を暴くというのが本作の本質で男性の否定ではないと感じる。

"哀れなるものたち"とは誰のことなのか?本作における対となる存在"誇らしきものたち"は1人でもいたのだろうか。つまりはそういう事だと思う。
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