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オオカミの家のikustatinoのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
4.5
『オオカミの家』

チリに実在したカルトコミュニティを題材にしたダーク・フェアリーテイル。
施設を逃げ出して森の廃墟に隠れた少女は、みつけた二匹の豚を育てながら密かに暮らし始める。
豚を子供に見立てて、施設で己がされたグルーミングを模倣し、少女は小さな箱庭で破壊と創造を繰り返す。

物語はどこからがマリアに実際に起きている事で、どこからが心象風景なのかが曖昧になっており、理屈のつかない恐怖に思わず息を潜めてしまう。
マリアを呼び戻そうとする狼の不気味な声と、彼女自身の壊れた心とが折り重なり、部屋と彼女と豚と箱庭の中にあるものは須く都度壊れ、また甦る。

遥か昔の出来事が現代日本の事件に重なるというのがなんとも辛いが、洗脳を直感的に体験するという特異性においても、コマ単位で破壊と想像を繰り返すクレーンアニメという独創性においても、今年を代表する一本である事は間違いない。
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