なお

哀れなるものたちのなおのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
今年の期待作の一つ。

主演エマ・ストーン、その脇を固めるのはウィレム・デフォーにマーク・ラファロと、ヒーロー映画にゆかりのある俳優陣が主要人物として出演しているのは個人的に嬉しい限り。

エマがプロデューサーも務めた本作は、1992年に刊行されたアラスター・グレイの同名の小説が原作となっている。
…これ、原作あるんだ。

✏️ベラの奇妙な冒険
清楚、快活、純潔───
自分がエマ・ストーンという俳優に抱いていたイメージはこんな感じだったのだけれど、それを見事いい意味でぶち壊してくれた作品。

『アメイジング・スパイダーマン』では"2代目"MJとしてヒーロー映画のヒロインを、『ラ・ラ・ランド』では恋に仕事に悩む女優の卵を演じた彼女が、これまで自分が出演してきたどの作品にもなかっただろう役柄を見事演じきった。
(まさかヘアまで出してしまうとは)

陳腐な言い方だが、エマの「女優魂」。
過去何か1作でも彼女の出演作を見たことのある方ならば、その「豹変」ぶりをぜひ本作で体感してほしい。
R18指定の作品なので、お子様にはかなり刺激強めの内容だけど…

さて物語の感想。
一度死の淵から蘇った後遺症で脳に障害を持ち、肉体と精神のミスマッチが起きている幼気な"少女"から、自分を蘇らせてくれたゴッドの背中を追い医者を志す聡明な女性になるまでのベラ・バクスターの成長劇が実に波乱万丈で面白い。

そんな波乱万丈の中でも、やはり本作で一番脂が乗っているのは、弁護士・ダンカンとの出会いにより抑圧から解き放たれセックスに明け暮れた青年期だろう。

「お金がないなら体を売ればいいじゃない」と、最悪なマリーアントワネットのようなことを言わんばかりに性に奔放なベラ、もといエマの濡れ場はエロいとかそういう邪な感情すら芽生えなくなるから本作は不思議だ。

その後も娼館の娼婦となったり、ゴッドの元に戻るもサディズムの化身みたいな将軍から女性としての尊厳を奪われそうになったり、とにかく「波乱万丈」。

そして本作のさらにスゴいところは、これだけ「人間の欲望大解放」をやりながらも、前述の通りベラという一人の人間が「女性として」成長していく姿をきっちり描いてる点なんですよね。

幼い少女が親への反抗から魅力的な男と家を飛び出して、世の中の楽しいことや嬉しいこと、逆に醜かったり悲しかったりすることを知り、酸いも甘いも噛み分けられるようになっていく。

どうしてもファンタジーと現実が入り混じった特異な世界観だったり、エマの迫真の"演技"の方にばかり目が行きがちだけれど、一つの「ヒューマンドラマ」としての完成度もかなり高いんじゃないかなぁ、とそう思いましたね。

☑️まとめ
約2時間20分と長めの上映時間もあまり気にならないテンポの良さも◎。

本作で見事、自身の俳優としてのキャリアに新たな道を刻んだ(ように思う)エマ・ストーン。
これまでも数々の人気作に出演したり、名誉ある映画賞の受賞など輝かしい経歴を積んできてはいるけれど、これからも変わらず「大女優」への道をずんずん突き進んでいってほしいな。

<作品スコア>
😂笑 い:★★★★☆
😲驚 き:★★★★★
🥲感 動:★★★☆☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★★★☆

🎬2024年鑑賞数:10(4)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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