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哀れなるものたちのchidorianのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.4
『哀れなるものたち』、原作小説を読んでから映画を観た。読まずに観る選択肢もあって、今となってはそっちを体験することは出来ないのだが、今回は正解だったと思う。

余談だが、アラスター・グレイの原作が素晴らしかった。こんな事がなかったら読まなかっただろうと思えば、映画化バンザイだ。
構成が風変わりというか、廃棄されていた19世紀の医者が書いた自叙伝を、グレイが序文と詳細な注を付けて本にしたテイのメタフィクションになっている。所謂奇書の類だろうが、ミステリーのワクワクや法螺話の爽快感に加えて、現代に向けたメッセージも込められた名作だ。

そんなわけで、小説を堪能してから観た映画は、どーーーしても一部分を切り取ったように見えてしまう。いや、後悔はない。考え方を変えれば、映画で描かれていない枠の外側を見ることが出来るとも言えるのだ。

シンプルに言うと、ベラという女性の成長譚なのだが、エログロがまあまあキツい事もあり、彼女の成長に追い付けない観客もいるかもしれないと、自分が原作を読まずに映画を観た事を想像して、そんな風に思ったりもする。

しかし、今観るべき映画である事は間違いないだろう。特に衣装と美術が素晴らしい。時代と場所をしっかりと踏まえつつ、あんなにも自由に楽しく描けるなんて。

それからこの映画は、しばしば『バービー』が引き合いに出される事に象徴されるように、ベラを通して、女性と女性の抱える様々な問題が描かれているわけだが、そこにピンと来なかった人以外は、原作を読むべきだろう。前述した「枠の外側」がこれでもかと言うくらい詳細に書かれているから、映画との違いに驚く部分もあるだろうが、映画のイメージの補完にはなると思う。

映画の感想か原作の感想かわからなくなっちゃったね。
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