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無垢なる証人のchidorianのネタバレレビュー・内容・結末

無垢なる証人(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

Netflixで配信されている韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』と同じムン・ジウォン氏の脚本だと聞き鑑賞。

どちらも自閉症スペクトラム障害(ASD)を扱った裁判ドラマだという点で共通していて、おそらくこの作品を発展させて『ウ・ヨンウ』が作られたのだろうと思わせるところがいくつもある。

ASDを持った15歳の少女ジウが「私は弁護士にはなれないが証人にはなれる。」と決意を述べるシーンがある。彼女は弁護士になる夢を持っているが、その障害故、夢を諦めてしまっている現実も描かれ、とても切ない。『ウ・ヨンウ』はASDを持ちつつ弁護士資格を取得した女性の物語だから、ジウの夢が叶ったようにも思える。

また、ジウは学校で様々ないじめを受けているが、ひとりだけクラスメートの友達がいる。ところが彼女もジウといることでいじめを受け、陰でジウにその仕返しをしている。『ウ・ヨンウ』にも幼なじみの友人グラミが登場するが、彼女はいじめをはねのける強さを持った女性として描かれている。

ジウが普通学級から特殊支援学級に転校し、「健常者の振りをしなくて良くなったので楽だ」と言ったり、映画では概ね、ASD当事者の厳しい現実が直球で描かれているため、ヒリヒリした感触だが、『ウ・ヨンウ』はそれがポジティブに展開されているので楽しく観られる。ドラマだけ観ると、ファンタジーだと揶揄する向きもあるかもしれないが、学校や職場での差別や、ASD当事者の抱えるエピソードが事あるごとに描かれ、制作陣の本気度が伺えるのは映画と同じだ。

ほとんどドラマの感想のようになっているが乗りかかった船だ、もう少し続ける。

チョン・ウソン演じるスノは、弁護士のあり方に疑問を感じ職を辞す。これも『ウ・ヨンウ』の中でウ・ヨンウの問題として登場する。つまり、ウ・ヨンウはジウとスノが合わさったキャラクターなのだ。

ドラマはあと半分(8話まで放送済み)。どういう結末を迎えるかしっかり見届けたい。

キャストについての感想を書くと、ジウ役のキム・ヒャンギはもちろん素晴らしいけれど、私的に特筆するならチョン・ウソンだなあ。微妙な心の揺れがよく伝わってきた。見合い写真ばかり渡してくる老父からの手紙のエピソードは泣ける。

もう一人は被告人役のヨム・ヘラン。いい人そうだけど実は悪い奴、をやらせたらこの人の右に出る者はいない。いい人の役でも、いやいや、そう見せかけて?実は?って思っちゃう。今作でも安定の展開。
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