chidorian

バービーのchidorianのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

曰く、バリバリのフェミニズム映画であるとか、ダメ男を炙り出すリトマス試験紙のような映画であるとか、シスヘテロ男性の自分としては、耳に入る情報に試験前のような緊張感を覚えながらの鑑賞だった。
結果、試験は合格だったかどうかわからないが、とても楽しめた。
ストーリーはとても気配りが行き届いていてわかりやすく、感情が迷子になるようなこともなく、大いに笑って泣いた。

某マンガ家が「男性を必要としない自立した女性のための映画。こんなの大ヒットするアメリカ大丈夫なの?」と嫌悪感を露わにしたようだが、そんな感情しか抱けないことに対しては何とも寂しい限りだ。
確かに女性の自立というのもテーマかもしれないが、視点を変えれば男性もたくさん登場するわけで、ケンの紆余曲折、バービーの添え物としての存在が現実世界で「男性」として目覚めバービーランドを支配したが挫折し遂にアイデンティティを確立するまで、も描かれているし、何ならむしろ男性が観るべき映画だろう。

ライアン・ゴズリングが最高で、おバカなケンが最後に涙を流しながら「ケンはケンであり、それだけで良いのだ」という結論にたどり着くくだりは、感動的なんだけどもうおかしくておかしくて、私が行った映画館はみんな静かに観ていたから、笑いを堪えるのが大変だった。

支配されたバービーランドに蔓延したトキシックマスキュリニティからバービーたちを救い出すのに、「ゴッドファーザー」や「フォトショップ」の話題を振るマンスプレイニングのくだりは、自分にも身に覚えがないわけではないので若干痛いところを突かれた感はあったが、それとてことさら気に障るようなことではない。

バービーランドとリアルワールドを行き来するとき、カーステレオでIndigo Girlsの『Closer to Fine』が流れるのがムチャクチャ嬉しかった。1989年にヒットして、私も大好きな曲だったから。劇中で確か3回かかるんだけど、最初はバービーがノリノリで、2回目はグロリアもノリノリなんだけど娘のサーシャはポカンとしていて、最後は娘もノリノリっていう、Z世代にも響くアンセムとして使われていることに感激した。私が行った映画館はみんな静かに観ていたから、歌いたいところを堪えたけれど。
Barbie The Album (Best Weekend Ever Edition)にはIndigo Girlsではなく、Brandi Carlile & Catherine Carlileが歌ったアレンジの違うバージョンが収録されている。Brandi Carlile & Catherine Carlileはオープンリー・レズビアンのカップルで、これはIndigo Girlsのふたりに対するリスペクトも込められているんだろうと思う。
chidorian

chidorian