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CLOSE/クロースのchidorianのネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

事前に入ってきた情報で、ちょっとイヤな予感がしていたのだけれど、的中してしまった。
とても仲の良いふたりの少年レオとレミ。中学に上がったら、クラスメイトから仲が良すぎるとからかわれ、ふたりの関係に変化が訪れる。そしてレミが死んでしまうのだ。
映画の前半と後半で描いているものが変わってしまうことに戸惑った。
少年期の友情や愛情が未分化な時期の心情と、彼らがどのように成長していくのかに興味があったので、言ってしまえば期待外れだったのだ。まあこれは誰が悪いというような問題ではない。

監督はオープンリー・ゲイで、自分の経験もストーリーの題材になっているのだろうが、インタビュー(※)では、「執筆の出発点は、“大切なものを壊してしまう”というアイデアでした。若い頃には、結果や影響を考えず、つい何かを壊してしまうことがあります。そうさせる背景には、一人でいられずに、集団に属したいという思いもあるのではないか。そんな発想から始めてみたかったのです」と答えている。

レミの死はそういう事なのだが、なにも殺さなくてもなあ。
韓国映画やドラマが好きでよく観るが、あちらでドッカンドッカン人が死んでも笑って済ますのに、こっちで少年がひとり死んだだけで文句タラタラって、我ながら勝手だよな。
「友情が壊れる」っていうだけじゃダメだったのかなあ。

男性同士の友情だか愛情だかよくわからない親密さから距離を置きたかったレオが、ホモソーシャルに溶け込もうとしたり、マチズモの象徴としてのアイスホッケーに没頭したりするのが痛々しくて、監督の言う「集団に属したいという思い」なのかとも思うが、セクシャリティを含めた自己が確立していないのに自らを「男性」に押し込もうとしているようで、そういう性役割が大っ嫌いな私は、レオの今後はまったくわからないけれど、「男性」として生きていく彼を想像してしまって釈然としない。もっと自由な未来が少しでも垣間見えたら良かったのに。

繰り返しになるけれど、映画が描いているものと、私が求めているものが違ったのだ。仕方ない。

歳を取ったせいか、親より先に子供が死んでしまうのを見るのはとても辛い。フィクションとはいえ。
そんなことが、この釈然としない気持ちの根っこにあるのかもしれない。
少年の死という劇薬ではなく、別の方法で破壊と喪失を描いて欲しかった。しつこいね。

この作品はルーカス・ドン監督の長編2作目だという。1作目の『Girl / ガール』も評判だったが未観なので観てみたい。

※ https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c030223/
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