みかぽん

国葬の日のみかぽんのレビュー・感想・評価

国葬の日(2023年製作の映画)
3.8
(すみません、例によってまた関係のない思い出話しから始めます💦)

私の両親は仲の良い夫婦で、喧嘩する姿など私が記憶する限りではただの一度だけで、それが以下だった。
母と当時小学生の私は何かの帰り道、選挙ポスターの前で足を止めてこんな会話をした。私はおもむろにある人物のポスターを指差してこう言った。
「お母さん、もしこの中から選ぶならこの人だよ」
「どうして?」
「だってこの人、優しそうじゃん。きっと良い人だと思うよ」
と返すと母も、
「そうねぇ、素敵な笑顔だからいい人かもね」と頷いた。
そして選挙の朝、私は父にこう伝えた。
「お父さん、お母さんはね、○○さんって人に入れるんだって。理由はね、笑顔がすごく素敵だからだよ」
それを聞いた父は口をあんぐりさせて、
「呆れるにも程があるな。お母さんはいつもそんな理由で投票に行くのか⁈」
と母に視線を向けた。すると母は母で父に向かい、
「私が誰に入れようとお父さんに批判される筋合いはないと思うけど?」
とぶ然とした表情で応酬した。
母の言い分は尤もだし、もしかしたら売り言葉に買い言葉だったのかも知れない。また実際、母が誰に投票したかなど分からないままだ。しかし、元アイドルなどが当選するたびに忌々しく感じる今の私自身は、当時の父の心情に重なるものがあるのかも知れない。

戻して本作、「国葬の日」。
安倍元総理国葬反対派の人々が発する言葉には明確な理由が読み取れるが、賛成する側の、とりわけ「(国葬を)やって良いんじゃない?」的人々の理由に至っては、あまりに漠然としたイメージで語られる。「笑顔が優しかった」「握手した手が温かかった」と、まるでテレビでよく見ていたアイドルに別れをつげるようなそれだ。

大企業や富裕層を優遇して蓄財を推進させ、更なる貧富の差を拡大させ、退任後もその政策を継承させた人。憲法を、三権分立を骨抜きにして意志のままに操れるよう画策し、自身の野望実現のために大きく駒を進めた人。三本の矢に至ってはオフレコの中で、「やってるふりだった」と自らを笑った人。権力を得るための政治資金と票集めのためならどんな人間とでも手を組んでそれを利用した人。「忖度」を横行させて善意の人間を追い込み、結果として命を絶たせた、そんな人間をどうして国民全体で弔わなければならないのか。どうしてそんな所属の党のイメージ戦略に付き合わされなくてはならないのか。
もっと急ぎ行うべき事案、金の使い場所は他に山とあるはずではないのか…。
みかぽん

みかぽん