成川ジロー

ネバーギブアップの成川ジローのレビュー・感想・評価

ネバーギブアップ(2023年製作の映画)
4.5
中国映画週間で鑑賞。邦題は『ネバーギブアップ』でした。
ワン・バオチャン監督・主演の格闘技映画。王道どストレートボロ泣きした。MMAを扱った映画としては個人的に『ウォリアー』に次ぐ傑作だった。クライマックスの試合で反撃に転じる部分に難はあるけど、前半のトレーニングシーンとかプロレスシーンが本当に瑞々しくて素晴らしいし、真っ直ぐな少年たちと主人公の絆には素直に感動できる。途中の社会的な個人攻撃を受けるところはリアル過ぎてつらい……実話なのかこれ。劇中の問答シーンで「心ある人達が気づいた」から一斉に攻撃が始まったみたいな感じのセリフがあったけど、その「心ある人達」の何割が本当に心ある人達なのか。ほとんどが誰かを攻撃したいだけのクズだとしか思えなかった。こういうところは日本も中国も同じなんだな。見ていて悔しくて悲しくなる。
見た人皆がそうだと思うけど、主人公と最初の子供たちの絆が特に最高で、酒飲むところも、地元の村で地獄の再会をしてしまうところも、滅茶苦茶泣きました。泣かないの無理だよ。ワン・バオチャンの演技が素晴らしいし、地元の村の地獄の再会で顔を合わせたときのあの表情、台詞を使わずに表情で、目で、全てを物語っていた。その後の家を訪れるシーンもね。そして、そこからの展開。最高でした。
ワン・バオチャンだけでなく脇も素晴らしく、一番好きなキャラは主人公を慕う部下のフォン。あの人が最高すぎた。主人公との関係性が滅茶苦茶良くて、いつからの知り合いみたいな詳細はほぼ描かれないけれど、それでもフォンが「格闘技をしているときの兄貴が昔からずっと大好き」というのが最初から最後まで演技の節々から伝わってきて泣かされた。知らない役者さんだと思うけど、本当に素晴らしい。

夜空のシーンは息を飲むほど綺麗で印象に残るし、今の日本にも通じる社会問題もあるし、日本全国の映画館で公開して欲しいと素直に思った。
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