成川ジロー

コヴェナント/約束の救出の成川ジローのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
4.3
アフガンに派遣された米兵と通訳として雇われた現地人の絆を通してアメリカのやり口を批判をする映画だったと思う。
普通の映画では後半の救出劇にもっと尺を取ってヒーロー映画っぽくなってしまうと思う。でもこの映画はバランスが逆で、前半の絆の生成、献身、忠誠心や責任などと言える部分に重きを置いてる。このバランスも納得。後半の救出劇は、英雄的行動ではあるけれど個人が国のケツを拭く夢、まぼろしの類だから。ただの美談にはできない。
見終わった後の感覚は『ウインド・リバー』に近い。エンドクレジットの文章と流れる写真を見せられれば、アメリカがやってきて、荒らして、見放した現実がそこにあることを思い知らされる。痛烈な批判だと思う。個人が通訳のために一人戻り救出するという実話があった訳では無いけど、酷い現実は確かにそこにある。

娯楽映画では無いので、ロックストック、スナッチ的ないつものガイ・リッチーらしい遊びや仕掛けなどのらしさは全然見られなかった。多分知らなきゃガイ・リッチーって気づかない。でも前作『キャッシュトラック』で見せた映画の最初から最後まで貫く強固な意志は感じ取れたから、今後こういう作風が増えるのかな。どちらもとても好きなので、これからもガンガン映画を撮って行って欲しい。
成川ジロー

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