成川ジロー

シャクラの成川ジローのネタバレレビュー・内容・結末

シャクラ(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

劇場で3回鑑賞。久しぶりのドニー・イェン監督主演作という事でしたが、監督のやったからなのか、良い意味でも悪い意味でもハチャメチャな素晴らしくファンタスティックで楽しい作品になっていました!!!
やっぱりアクションは特に良くて、『グリーンデスティニー』や『HERO』の様なふわっとしたワイヤーの使い方で無く、人のリアクションや高速移動にガンガン使いまくってて、とんでもない勢いで自分も相手のぶっ飛ぶし、家も物もバキバキぶっ壊れてて最高!!
個人的には『酔拳2』のワイヤーアクションの最新進化系って感じがした。ドニーさん演じる喬峯の使う「降龍十八掌」はその気の使い方が相手を引っ張ったり吹っ飛ばしたり、漫画『エアマスター』の渺茫が使った「体の中を掴む様な勁」をハイスピードで実写化したような素晴らしい描写で見ていて滅茶苦茶楽しかった。ドニー流能力バトルアクション、もっともっとやって欲しい!
オープニングのアクションも、中盤の山場である英雄が集まる聚賢荘でのアクションも、クライマックスのアクションも、全部本当に凄い見応えあって面白い。中盤のアクションでテンション的にも作り手側的にも一度燃え尽きてしまっているので、クライマックスでそれを越えられなかった気がするのは勿体なかったかな。スケジュールヤバくて場所を使える時間が無いから苦肉の策で壁や床をぶち抜いて移動しながらのアクションになったらしいけど、その部分は凄い良かった。最後があんまり理屈が無いドッカーンを大きいドッカーンで返すだけの逆転劇になってしまっていたので(ウー・ユエの技には効かないと言っていた降龍十八掌が何故か効いたのがわからん^^;)、そこをどうにかしつつ、ウー・ユエとのタイマンをもっと長く見たかったな。超速ブレード対決(鞘弾き合戦)とかも凄い良かった。


もう一つ個人的に見所だと思うのは、登場人物が全員短気かクズなのでお話が皆できず、会話のドッヂボールになっているところ。ドッヂボールと言う表現すら生ぬるいかもwこれ普通の映画なら凄いダメなところになるんだけど、香港アクション映画なら「まあ良いかw」と思えてしまうのは僕だけでしょうか?w滅茶苦茶過ぎて笑ってしまった。
「医者だから頼ってきた者は全て治すべきだよな!だがお前が連れてきた人は断る!」
「俺の命を差し出すからこの人を助けてくれ!」
「良いだろう」
「だが俺の命を簡単に取れると思うなよ!」
と言う流れで度肝を抜かれたし、
「お前と我々兄弟の命の恩人だ!」って言ってたユー・カンが最終的に「女ごと殺せ!」って言ったり、マジでもう滅茶苦茶過ぎて凄いwwwここら辺で少林寺の坊さん達がお経をあげる展開があって、脚本的には喬峯への鎮魂だと思うんだけど、「もうみんな身勝手すぎてお手上げ!」って感じに見えてしまって余計に面白いw
原作ありだよね?脚本は現場にあったのかな??ドニーさん監督って『ドニー・イェン COOL』とか『新・ドラゴン危機一発』ぶり?主人公のアップふぁやたら多いとかは無かったけど、このお話の塩梅は相当な迷監督ぶりだと思う。全体的なテーマややりたい事は良いんだけど、ほんと脚本がヤバい。
他にも基本的に「もっとちゃんと会話しろよ!」って部分が多過ぎて、阿朱の親子関連の話とか絶対に話せばどうにかなったし、そもそも「阿朱が馬夫人に化けてカマをかける」と言う策を実行した時点で白世鏡と馬夫人はクロだってわかってるんだから、そいつらを放置せずにとっちめてから黒幕とされる段正淳のところ行けよ!とかツッコミどころは滅茶苦茶ある。
そもそもドニーさんは「これ見る皆はこのお話はだいたいわかってるよね?」ってスタンスなのか、作品として背景やお話を客に説明する気があまり無い。いや、分からせる気が無いと言うべきか、最初の文章での時代説明もオープニングクレジットもエンドロールも凄いスピードで消えていく。自分は固有名詞が地名なのか組織名なのか個人名なのか全然分からなくて、一回目のときは終始混乱してた。打狗棒も重要アイテムっぽさは出してるけど説明不足だし、途中でもう考えずに雰囲気で楽しむしか無い!ってなりました^^;
そしてラストのサービス過剰な畳み掛け!!言ってしまえば喬峯が馬で横切った後ろにのどかに暮らす喬峯と阿朱の幸せな姿が写るカットで終わっていれば、哀愁も感じさせて中々感動的で一番いい感じで終わるんだけど、引き算のできない自主映画の新人監督レベルのどっちかと言うと無い方が良いカットばかりが続いて、物悲しい物語の余韻に浸る事も許されず困惑し、笑ってしまう。そもそもその前の「画面を横に馬で走る喬峯、フェードアウト」→「画面を縦に馬で走る喬峯、フェードアウト」(順番逆かも)とどっちかで良いだろ!?と突っ込まざるを得ない繋ぎからなんか可笑しくて、そこからはモンゴルっぽい騎馬民族の王っぽくなった喬峯と一緒に走る阿紫!(そもそも阿紫のキャラのバランスもいきなり出てきてアクションしまくっててなんか可笑しい笑)なんと生きていたボス!ボスの親父登場!なんと喬峯の親父(ドニーさんの親父はドニーさん!)も登場!!何故か喬峯の育ての親を殺す喬峯の親父!!!オープニングとは違う形で捨てられている赤ちゃん喬峯!!!親父世代のバトルはこれからだ!!!!倍速エンドロール!!!!と、全く予想できない斜め上の怒涛の展開で、最後の最後までカオスっている!!!!!凄いよドニーさん!!!ハリウッド映画じゃ絶対に見れないよ!!!!!サービス精神あり過ぎて最高だよ!!!!!
他にも二箇所、これは職業病ではあるんだけど、喬峯が実家に入る一個前のズームカットと、喬峯が雨のボロ屋で阿朱に「治るよ」って言うシーンの次のカットの馬車移動のドリーのカット。フレームレート24で撮るところを30で撮っちゃって編集で減らしたのか一定間隔でガクっ、ガクってなったりして未成熟で、世界一のアクションスターのドニーさんが作った自主映画って感じがした。良い意味でも悪い意味でも。
オープニングで軽く倒した人が、特殊能力を使える人は凄い少ないっぽくて実は滅茶苦茶強い人だったりするのもほんと好き。(あの飛ばした炎の着弾シーンが無いのであの炎が実際に物が燃えるレベルなのかどうか謎なのも好き)

万人にはあまり勧められない大好きな作品でした!大好き!!!続編お願いします!!!!
成川ジロー

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