えるる

市子のえるるのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

俳優さん達の演技が凄い。杉咲花ちゃんは明るい役が多いけど、だからこそ重い過去を持つ謎大き女も凄く似合う。若葉竜也さんは「生きちゃった」の名演技が印象的でこの作品でも凄く良い。
過去と現在のシーンが全てが夏の汗と蝉の声、照りつける太陽の中で流れて行く。夏の田舎の映像が綺麗なのに妙な不気味さを含んでいてそれがまた良い。

普通の幸せな恋人のプロポーズから始まり、彼女の市子が筑波山で発見された若い女性の白骨遺体発見のニュースを聞いた後に失踪。恋人の長谷川が市子を探し証言を得ながら市子の幼少期、高校時代、卒業後、今などの時間を切り替わりながら市子の過去と真実を探す。渡辺大知は内縁の夫かと思ったが母の再婚相手。なんか親子関係が歪つで嫌な雰囲気を感じつつ、最初の段階での謎が綺麗に回収されて行く。市子は出生届が出されておらず、月子という難病で外に出れない妹の戸籍で年齢も名前も偽り生きていた。それを知ってしまった同級生ストーカー北君、市子が義父を刺すところを目撃し殺人を隠蔽。さらにストーカー化する。妹の月子を市子が殺した事。限界だった母はありがとねとそれを受け入れる。筑波山の遺体は月子。
幸せになってはいけない夢を持ってはいけないと思いつつも市子は月子ではなく市子として生きたいという思いから過去を捨て暮らしたいがそうも行かなくなってしまい長谷川との幸せを捨てざる得ず、新しい戸籍を求め自殺願望者と全てを知り自分に執着する北を殺す。
もう長谷川との幸せな日々には戻れない。生き残って市子はどうしたいのか。

日本で出生届が出されていない子供は意外と多かったりする。不法滞在者の子や市子と同じ様に離婚後の期間により父親との血縁関係を認めない為など。鈴木大介さん著書のルポルタージュ「ギャングース」などにも書かれている。(映画や漫画は内容違うので注意)
今回の市子の場合、父は自殺しているので出生届は手続きは大変だが後から出す事もできるのに何で?と思うし無知は罪だと思う。

暗い映画ではあるけど、あーそういう事かって感じを恋人の長谷川と共に感じながら見ている様な気持ちになり、淡々とした市子と壮絶な人生のギャプも見進めるうちに何となく理解し始めて行く。最後の焼きそばや長谷川の家出過ごす市子を守りたい気持ちとだけどもう引き返せない切なさが残り、諦めに似た終わりがくる。

私は好きです。
えるる

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