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悪は存在しないのyonemakoのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.8
唐突なラストシーンに面食らった人も少なくないと思うけど、少し時間をおいて思い返してみると、冒頭の「巧さん忘れすぎですよ」から、スパイダーマンが糸を吐いてるような勢いで何重にも伏線が貼られていたように思う。いわゆる「チェーホフの銃」も繰り返し出てくる。学童保育もどうなってるの状態だし。

スクリーンに映る美しい景色や自然にかこまれた暮らしとは裏腹に、不穏な空気、見えない緊張が音楽に合わせて静かに積みあがっていてあのラスト。

お父さんがなぜ高橋の首を締めたのか、自分なりの解釈では、美しいものを汚されるような気がして許せなかったのかと。フェリーニ『道』のザンパノ、タルコフスキー『ノスタルジア』の終盤での焼身自殺、フェリーニの『8 1/2』のラストで海辺に打ち上げられた怪魚とかの、暴力の出現を連想。

好みが分かれる作品だとは思う。タイトルの通り、どちらかが善で、どちらかが悪ではないことを示し、すっきりさせてくれないから。でも自分は納得できた。
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