なお

ネバーセイ・ネバーアゲインのなおのレビュー・感想・評価

3.5
"もうごめんだよ"

007シリーズの第7作『ダイヤモンドは永遠に』以来、およそ12年ぶりにショーン・コネリーがジェームズ・ボンド役としてスクリーン上に帰ってきた。

一般に”正史”と認識されるイーオン・プロダクション制作の作品ではなく、1967年公開の『カジノ・ロワイヤル』と同じく007シリーズの権利関係や大人の事情が複雑に絡み合った結果生まれた産物である。

ちなみにこのタイトルは、ボンド再演の打診を受けたコネリーが返答に迷っていたところ、妻から「もうボンド役をやらないなんて、そんなこと言わないで(=ネバーセイ・ネバーアゲイン)、もう一度おやりなさいな」と諭されたことをきっかけに命名されたものだという。

✏️リメイク
物語の大筋は007シリーズ第4作『サンダーボール作戦』とほぼ同様のもの。
原爆2機を悪の組織に奪取され、その原爆2機を使用しないことと引き換えに多額の金銭を要求されるなど、『サンダーボール作戦』と似通った展開が多い。
ちなみにこの悪の組織の大ボスの名前やボンドガールの名前も全く同じ。

そのため本作は『サンダーボール作戦』のリメイク、と認識されていることが多いが、厳密には違う。
そのへんの詳しい事情はぜひ調べてみてほしい。

✏️12年ぶりのウォッカ・マティーニ
本作は物語そのものよりも、12年ぶりにジェームズ・ボンドとして復帰したコネリーの活躍を楽しむ、今風の言い方で表現するならば「ファンムービー」というところだろうか。

本作は主演はもちろん、共演者や監督に制作スタッフなど、映画を作るために必要な人選全てがコネリーの手に委ねられ制作されたという。
元ヤクルトスワローズ監督・古田敦也氏の「代打オレ」ならぬ「主演オレ・監督その他スタッフの人選オレ」という、21世紀を生きる自分からするととんでもない規模と発想から生まれた映画であることに驚愕した。

そんな12年ぶりのボンド再演となったコネリーのアクションは実に体を張った物であり、自分よりも上背のある大男と格闘したり、サメ映画さながらの水中アクションを展開したり、公開当時53歳ながら以前と変わらぬ活躍を見せてくれた。

本作ではシリーズ恒例のボンドカーが登場せず、代わりにボンドバイクが登場。
(ちなみに機体はヤマハ・XJ650ターボ)

また、本作公開当時に過熱しつつあったテレビゲーム・ブームを反映しようとしたのか、ボンドと敵組織のボスであるラルゴが、いまひとつルールがよく分からない国盗り合戦的なコンピュータゲームに興じる場面も。

過去シリーズではあまり見られない目新しい演出が楽しい。

✏️夢の共演
物語には関係ないが、本作には「Mr.ビーン」としてブレイクする前のローワン・アトキンソンが出演している。

本作でアトキンソンが演じる人物は、髪型や風貌こそビーンとは似ても似つかないものだが、あの独特な顔立ちは見てすぐに「Mr.ビーンじゃん!」と思わず興奮。

世界的スパイ、ジェームズ・ボンドと、世界的コメディアン、Mr.ビーンの共演が見られるのは本作だけ(?)

☑️まとめ
などなど、本作の公開に至るまでのアメリカ映画界の複雑な権利関係や大人の事情的イザコザの方が自分には特徴的だった作品。

物語そのものは、前述した一部の要素を除いて新鮮味もそれほどなく、初期007シリーズ特有の退屈さが滲み出ているのであまりポジティブな評価には値しない。

本作公開から約20年が経った2000年ごろ、70歳代となったコネリーは再度のボンド役に興味を持っていたそうだが、それは叶わず。
彼にとって、これが正真正銘最後のミッションとなった。

🎬2022年鑑賞数:98(39)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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