HK

アタラント号のHKのレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
3.5
29歳という若さで亡くなったフランスの巨匠ジャン・ヴィゴの唯一の長編映画。キャストはディタ・パルロ、ジャン・ダステなどなど

とある船長が村の娘との結婚を記念してル・アーブルと田舎村を繋ぐ艀船、アタラント号で結婚旅行をしようとしていた。搭乗メンバーは船長、村の娘、そして老水夫、さらには彼が連れてきていてる大量の猫たちである。果たしてどうなるのか。

作られた時代を考慮すると、確かに凄い作品なのかもしれないが、まだあまりこの映画の真の良さのような部分が分からない所が多い。

あくまで、内面を強調するという映像の撮り方ではなく、彼らの行動の節々から物語を行うという、サイレント映画的な挙動を取ることで、あまり会話が分からなくても映画が理解できるのが凄いのかと思う。

一番驚いたのは、あの大量の猫ちゃんだ。可愛い。普通に水夫のお爺ちゃんにしがみついているし、かなり飼いならされていますね。観ていてとても愉快で良かったと思います。

他にも、お爺さんの刺青やら、ホルマリン漬けの手やら所々闇を感じさせるような設定も多数見受けられる。そこがこの作品が、登場人物の周辺的なもので見ている人に分かるように語らせようとするスタイルを表しているのか。彼がどんな経緯で水夫になったのかどうかを考えさせられる。

主人公の船長さんは、なんか初めは温厚だと思ったのだが、途中、からかってきたジュリエットや老水夫にぶち切れて、彼の部屋にある食器を下に叩きつけるというとんでもない所業を犯す。あれで善人というのが信用できん。なんか、統合失調症なんじゃないかと疑うような行為であったため、あれで大いに好感度が落ちた。

まあ、映画内では本人の性格よりも映画内アクションを重視するために、あんな行動をさせたのかと思うが、ちょっと無理があったような。

他にも、水の中での撮影シーンなども含めて、とても当時としては凝りに凝った演出も見ることができたため、そのようなシーンはとても良かったと思います。他にも町全体を見せるための俯瞰撮影なども映画的でとても良かったです。

ストーリーは本当に3人の人間たちのちょっとした問答やらドタバタ劇みたいなものに終始していました。そのため、全体的には盛り上がりには欠けるのですが、却って温かみが感じられて良かったです。

いずれにしても、見れて良かったです。
HK

HK