エミさん

西湖畔に生きるのエミさんのレビュー・感想・評価

西湖畔に生きる(2023年製作の映画)
3.5
TIFF2023にて。
前作とはイメージがガラリと変わって驚かされたが、違わず、映像の美しい素晴らしい作品でした。

西湖の茶園で働いていた女性が解雇された次に行き着いたのが、足裏シートを売るマルチ商法の団体。
洗脳されてハマる母と助けようとする息子。悲しいが、よくある事件であり、世知辛い社会で生きる庶民の姿を客観的に切り取ることで、自分探しという欲求を通して、運命をどのように切り開いていくかということが描かれていて、美しい風景の映像とは裏腹に、経済悪化に翻弄される親子の様子は、惹き込まれてとても気持ちがヒリヒリしました。

人間誰しも多様性を秘めているが、どう有りたいか、どうしたいかという気持ちを抱けるのは、自分という者を少しでも理解している人が、そう思えるのだと思います。

1つの欲望から、自分という者がどういう人間でありたいか?と気付くことは、生きる力でもあり、その先にも沢山の可能性という選択肢が待ち受けている。失敗や成功を繰り返しながらも人は死に向かって生きていかねばならない。超高齢社会となった今ではとても長い過酷な道のりとなってしまったが。

お茶という字は草と木の間に人を書くが、人間は草木の間に生きており、 人間の個体は草木のような生命があるという。
草木の様に、抗わず自然に生きるのが美しいのだな…と、感じさせられた映画でした。