Ren

彼方にのRenのレビュー・感想・評価

彼方に(2023年製作の映画)
2.5
今年度アカデミー短編実写映画賞ノミネート。深い喪失感、絶望、悲しみ、それらを抱えて生きることを僅か18分に収めている。野心的だし誠実なのは伝わるけど、イマイチ消化不良だった。

時間が全てを癒してくれるなんてまやかしだし、人生とは絶望に打ちひしがれても過ごしていかなければならない時間だということを精一杯伝えてくれる。人との交流も傷を癒す訳ではなく、立ち直れないこともあるのが人生だ。自分は『マンチェスター・バイ・ザ・シー』を想起した。

しかし、このテーマと短編のフォーマットの相性に甚だ疑問が残る。
ちょっと似ているというだけで短編と長編を安易に比べるのは流石にズレているけど、『マンチェスター ~』が130分かけて描いた喪失と交流と再生というテーマ(そう言えば『ドライブ・マイ・カー』は3時間だった)を18分で描き込むとしたら不足が生じるのは当然。
それが観客の余韻に寄与しているなら分かるが、今作は、冒頭4分の衝撃がどう考えても最大インパクトの瞬間になってしまっていて、残り10分少しでそれを取り返せていない気がした。ちょっとセンセーショナルなモノ、という消費をされかねない。『私の中のパズル』のような作劇の頭でっかち感とでも言おうか。

デヴィッド・オイェロウォの演技や静謐な撮影はとても良い。多くの人の心に響くだろうこともよく分かる。ただ、短編というフォーマットについて考えざるを得ない。
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