YuukiTeramoto

ゴールド・ボーイのYuukiTeramotoのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
4.6
※具体的なネタバレはしてませんが、察しのいい人はなんとなく展開が分かってしまうもしれない書き方をしています※












「あなたにもきっと、殺したい人がいる」というキャッチコピーがとても印象的だったけど、観終えるとこの言葉について考え込んでしまう。

殺したい…までは思わなくても、あいつがいなくなればいいのに、ムカつくから消えてほしい、もし死んでも悲しくないむしろラッキー、くらいに思ったことがある人は少なくない気がする、というか私はある。
だけど、本当に殺そうとする人はほぼいないだろうし、何よりリアルに計画を立てたり、本当に実行しようとすると怖気付いてできなくなってしまうと思う。それくらい、「人を殺す」って恐ろしいことだから。

でも、この映画の「主人公」は、その恐ろしさを感じない。問題解決方法の一つとして、当たり前に「人を殺す」が選択肢にあって、それを実行することにも躊躇いがない。
それが凄まじく恐ろしく、だけれど、ここで終わりか?思ったくらいの怒涛の展開ではドス黒い爽快感も感じてしまった。

そこで終わらせなかったのがこの映画の真摯さ。
「大人を舐めるな」
殺人鬼が子どもたちに言ったこの言葉を、クライマックスの他の大人たちの姿で思い出す。ただ子どもをビビらせて言うこと聞かせる、だけの意味の言葉ではないんだこれは。あなたを逃げさせない、ちゃんと向き合う、そんな決意の言葉でもあるんだ。

沖縄の海の美しさと岡田将生の美しさが、よりエグみを増幅させている。
岡田将生って、目の奥真っ暗なドス黒い役をやる時が最高に美しいと思ってるんで、もう最高。そんな岡田将生は最高に美しく素晴らしいのだけど、岡田将生がこの映画に関してよく言っていたように、子どもたちが素晴らしい。

禍々しい殺人鬼の物語であり、瑞々しい一夏の青春ドラマでもあり。
すごいもんを観た!もう一回最初から見たい。ゾッとするところが、きっとたくさんある。
YuukiTeramoto

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