YuukiTeramoto

オッペンハイマーのYuukiTeramotoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
まず、思っていた以上に(この表現は相応しくないかもしれませんが)とても面白かった!
物語の序盤から、オッペンハイマーという人物のドラマとしてとても面白く引き込まれた。

冒頭、プロメテウスの火の文章が映されますが、あの文章がこの映画の全て。原爆という火を人類に与えてしまったオッペンハイマーが、岩に縛りつけられるまでの物語。
アメリカ公開当時から様々な意見があって、どんな映画なんだろう…と楽しみと不安がありましたし、受け取り方に正解があるわけではないけど、私としてはこの映画が核を肯定してるとは全く思わなかった。
というか、アメリカでよく言われる「原爆が終戦を早めた!」という説についても否定的な意見もかなり描かれていて、彼の功績は罪を償うべきものである、というクライマックスのセリフも含め、こんな描き方なのにアメリカでも大ヒット、かつ保守派からも絶賛されてるらしい映画を作ったノーランすげぇな、と思ったレベル。

原爆を作り上げるためにメンバーが集められ形になっていく過程は、これから出来上がるものが原爆だと分かっていのもわくわくしてしまって、でもそこから本当に完成が近づき、投下される日が近づくにつれて、とてつもなく恐ろしい気持ちになっていった。
ドイツ降伏後も原爆開発、投下計画をやめないのは、ナチスに勝つことでなく原爆を実際に落としてみることだけが目的になっているように見えて、原爆って何で落とされなきゃいけなかったの???という気持ちにめちゃくちゃなっていった。
この一連の流れは、日本人なんで原爆が落ちた後どんなことが起きるかをよく知ってるのに加えて、オッペンハイマー自身も恐怖や疑問を感じ始めているのが分かるし、その後投下成功が賞賛され彼が複雑すぎる心境でスピーチするシーンまで含め、すごく恐ろしかった。戦争とは人を殺すことである、という当たり前すぎる事実を突きつけられた感じがした。

時系列シャッフルというのは知ってるけどそれ以外の予備知識何も調べずに見たんで、多分人物関係とかちゃんと分かってないとこも多いけど、混乱したりはしなかったです。
私に知識などなどが足りないもんで、ストローズや妻との物語についても思うことはたくさんあるけど、言語化が難しいので諦めます😀

凄まじく濃密な映画だった。
※赤裸々ラブシーン、あそこまでやらなくてもよくなかった??とは思った。
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